明晰夢工房

読んだ本の備忘録や日頃思ったこと、感じたことなどなど

【感想】十二国記『白銀の墟 玄の月』1~2巻

白銀の墟 玄の月 第一巻 十二国記 (新潮文庫) 作者: 小野不由美 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2019/10/12 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 正直なところ、『白銀の墟 玄の月』の1巻については、これが十二国記でなければ最後まで読みとおせた…

【感想】小林昌平『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』は思想書のダイジェストとしては使える

その悩み、哲学者がすでに答えを出しています 作者: 小林昌平 出版社/メーカー: 文響社 発売日: 2018/04/27 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る アリストテレスやベルクソン、シッダールタ、ラカン、ハンナ・アーレントなどなど古…

ハンセン病療養所の絵画クラブ「金陽会」の絵画

NHKEテレ「新日曜美術館」で、ハンセン病療養所の絵画クラブ「金陽会」に所属する人たちの絵画を紹介していた。 紹介されているものの中には絵画表現として一流のものもあれば、上手くはないが独特の味があるものなどさまざまなものがあるが、全体としては明…

【書評】『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365 レビュー 人物編』の「悪人」の項目には誰が入っているのか?

1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365 人物編 作者: デイヴィッド・S・キダー,ノア・D・オッペンハイム,パリジェン聖絵 出版社/メーカー: 文響社 発売日: 2019/04/12 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る このシリーズ、ど…

【感想】三崎律日『奇書の世界史』に書かれたダーガーの意外な実像

奇書の世界史 歴史を動かす“ヤバい書物”の物語 作者: 三崎律日 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2019/08/23 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る かつてと学会は、「著者の意図とは別の視点から笑える本」をトンデモ本と定義していた。本書で紹…

「知恵泉」武田勝頼回の長篠の戦いについての黒田基樹氏の発言のメモ

「~の」ばっかり多くてタイトルが読みにくいがあまり気にしない。 真田丸時代考証メンバーの一人としておなじみの黒田基樹氏の長篠の戦についてのコメントが面白かったので、忘れないうちにメモしておく。 ・信長は本願寺との戦いを切り上げて急遽長篠に駆…

勝間和代さんが失恋エントリを書いた日に「起きていることはすべて正しい」という動画をアップしていた

news.livedoor.com ご自身の失恋について勝間さんのブログに書かれていたことに驚くと同時に、これはしばらくユーチューブの方も休むのかな、と思っていたのですが。 勝間さんが「本当に悲しいです」というタイトルのブログ記事を書いていた11月11日、ユーチ…

【感想】鴻上尚史『孤独と不安のレッスン』に「ほがらか人生相談」の原点を見た

孤独と不安のレッスン (だいわ文庫) 作者: 鴻上尚史 出版社/メーカー: 大和書房 発売日: 2011/02/09 メディア: 文庫 購入: 8人 クリック: 21回 この商品を含むブログ (13件) を見る この本を読んでいて、ファストフード店で一人で食事している男性を撮影し、…

【感想】内山昭一『昆虫は美味い!』

昆虫は美味い! (新潮新書) 作者: 内山昭一,長畑直和,畠山モグ 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2019/01/16 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 昆虫食といえばこの人、内山昭一氏による昆虫食の雑学本。 わざわざ食べる人がいるからには、昆虫食は…

孔子が論語で語った名言にどれくらい「そうだよな」と言えるか

もう20年くらい前のことだと思うが、酒見賢一が雑誌のインタビューで「論語に書いてあることって、そうだよなって思うことが多いですよね。親の年齢を知らないようではいけないとか」と答えていたのを覚えている。おそらくは『陋巷に在り』に関係するインタ…

【感想】貴堂嘉之『南北戦争の時代 19世紀(シリーズアメリカ合衆国史2)』

南北戦争の時代 19世紀 (岩波新書) 作者: 貴堂嘉之 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2019/07/20 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 岩波新書のシリーズアメリカ合衆国史の2冊目。わかりやすく読みやすい。第1章では西漸運動の展開について書かれ…

【感想】『世界をおどらせた地図 欲望と蛮勇が生んだ冒険の物語』は探検家列伝として読める本

世界をおどらせた地図 作者: エドワード・ブルック=ヒッチング,ナショナルジオグラフィック,関谷冬華 出版社/メーカー: 日経ナショナルジオグラフィック社 発売日: 2019/09/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る ナショナルジオグラフィック社の…

【感想】藤沢周平『蝉しぐれ』が時代小説の最高傑作である理由

蝉しぐれ (文春文庫) 作者: 藤沢周平 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2012/09/20 メディア: Kindle版 購入: 2人 クリック: 2回 この商品を含むブログを見る なんという完璧な小説だろう。藤沢周平作品にどれもはずれはないが、その中でもこれは最高傑作…

瀧本哲史『武器としての交渉思考』と人間関係における「コモディティ人材」について

武器としての交渉思考 (星海社新書) 作者: 瀧本哲史 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2012/06/26 メディア: 新書 購入: 3人 クリック: 64回 この商品を含むブログ (52件) を見る 瀧本哲史の『武器としての交渉思考』には、労使交渉において「コモディティ人…

【書評】北條芳隆(編)『考古学講義』

考古学講義 (ちくま新書) 作者: 北條芳隆 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2019/05/07 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る ちくま新書の歴史講義シリーズのなかの一冊。 先史時代から古墳時代までをカバーする14のトピックはどれも興味深いものば…

『鴻上尚史のほがらか人生相談』に学ぶ、人の悩みを聞く極意

鴻上尚史のほがらか人生相談 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋 作者: 鴻上尚史 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2019/09/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る ネットで大評判の人生相談が書籍化 AERA.dotでの連載を読んでいた人ならわ…

縄文文化は『文明』ではない──山田康弘(監修)『縄文時代の不思議と謎』

縄文時代の不思議と謎 (じっぴコンパクト新書) 作者: 山田康弘 出版社/メーカー: 実業之日本社 発売日: 2019/01/08 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る もう20年以上前のことになるが、三内丸山遺跡を見に行った時の衝撃はいまだに忘れられない。300…

岩波新書からシリーズ中国史が全5巻で刊行開始

11月からシリーズ中国史が刊行開始です。第1巻『中華の成立 唐代まで』渡辺信一郎第2巻『江南の発展 南宋まで』丸橋充拓第3巻『草原の制覇 大モンゴルまで』古松崇志第4巻『陸海の交錯 明朝の興亡』檀上寛第5巻『「中国」の形成 現代への展望』岡本隆司※時代…

【感想】澤村伊智短編集『ひとんち』で知る、ホラーにおける小説の強み

ひとんち 澤村伊智短編集 作者: 澤村伊智 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2019/02/19 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 『ぼぎわんが、来る』で有名な澤村伊智のホラー短編集。8つの作品はどれも味わいが違っててそれぞれに楽しめるが、やはり…

【感想】『図書館の大魔術師』3巻における「知性の多様性」

図書館の大魔術師(3) (アフタヌーンKC) 作者: 泉光 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2019/08/07 メディア: コミック この商品を含むブログを見る いよいよ司書試験が始まった。第一次の筆記試験は2巻の終盤からすでに始まっているが、この試験は3日間個室に…

『氷と炎の歌』(ゲームオブスローンズ原作)を読んで考えた「小説の強み」

『氷と炎の歌』を先に読んでいると感じる違和感 最近、アマゾンプライムでゲームオブスローンズを観ている。 いまさら言うまでもなく、これは極めてすぐれた映像作品だし、これに多くの人が熱中しているのもよくわかる。 だが、原作小説『氷と炎の歌』シリー…

【感想】『図書館の大魔術師』2巻に見る「知識の使い方」

図書館の大魔術師(2) (アフタヌーンコミックス) 作者: 泉光 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2018/11/07 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る saavedra.hatenablog.com 本が与えてくれるものとは何か 1巻かけてようやく真の主人公となったシ…

『図書館の大魔術師』1巻が良すぎて語彙力を失ったのでIQを取り戻しつつ感想を書くことにする

図書館の大魔術師(1) (アフタヌーンコミックス) 作者: 泉光 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2018/04/06 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (2件) を見る 「すげえものを見た。すげえものを見た」 これは、北方水滸伝で花英が敵将を一矢で仕とめ…

旧約聖書の面白さはもっと知られるべき。阿刀田高『旧約聖書を知っていますか』で旧約聖書の一番おいしいところがわかる

旧約聖書を知っていますか (新潮文庫) 作者: 阿刀田高 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1994/12/20 メディア: 文庫 購入: 12人 クリック: 85回 この商品を含むブログ (85件) を見る 大学生一年生のとき、旧約聖書学という授業を取ったことがある。先生はい…

『昭和史の10大事件』と宮部みゆきの見た宮崎勤事件

昭和史の10大事件 作者: 半藤一利,宮部みゆき 出版社/メーカー: 東京書籍 発売日: 2015/08/24 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 半藤一利と宮部みゆきが、昭和金融恐慌や2・26事件、東京裁判や金閣寺消失など、昭和史の「10大事件」につ…

マクベスとマクベス夫人と「男らしさ」の枷

かつてある大物政治家を暗殺しそこねた右翼青年が「男になりたかった」と漏らしていた記憶がある。男はただ生きているだけでは「男」になれない、「男らしい」何かをなさなくてはならないのだ──こういう価値観は古びてきてはいるものの、それでもなお残ると…

ヴァイキングの歴史や文化を知るためのおすすめ本5冊

ヴィンランド・サガのアニメも始まるので、ヴァイキング関連で今まで読んだものの中からおすすめ本を紹介することにします。ヴァイキング本の中でもなるべく内容がかぶらないものを選んでみました。 1.図説ヴァイキングの歴史 図説 ヴァイキングの歴史 作…

【書評】『世界の辺境とハードボイルド室町時代』文庫版の「近未来日本に中学氏族が出現する」という話が面白い

世界の辺境とハードボイルド室町時代 (集英社文庫) 作者: 高野秀行,清水克行 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2019/05/17 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る この本の面白さはもうあちこちで語られ尽くしている気もするし、実際一度手に取ったが最…

【感想】『鹿の王』の最大の魅力は「あたりまえを活写する力」

鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐ 作者: 上橋菜穂子 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店 発売日: 2014/09/24 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (51件) を見る 鹿の王 (下) ‐‐還って行く者‐‐ 作者: 上橋菜穂子 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店 発売日…

【感想】柳広司『二度読んだ本を三度読む』と「司馬史観」という枷

二度読んだ本を三度読む (岩波新書) 作者: 柳広司 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2019/04/20 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る アニメ化もされた『ジョーカー・ゲーム』などが有名な柳広司さんの書評集。取り上げられている作品は『山月記』…