明晰夢工房

読んだ本の備忘録や日頃思ったこと、感じたことなどなど

小説

精霊の守り人外伝『風と行く者』感想:今回はロタ王国を中心とする過去編

風と行く者 (偕成社ワンダーランド) 作者: 上橋菜穂子,佐竹美保 出版社/メーカー: 偕成社 発売日: 2018/11/19 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 守り人シリーズはしばらく短編集の刊行が続いていたが、今度は長編。冒頭でバルサとタンダ…

門井慶喜『かまさん』感想:函館共和国が敗北した理由とは何か

かまさん 榎本武揚と箱館共和国 (祥伝社文庫) 作者: 門井慶喜 出版社/メーカー: 祥伝社 発売日: 2016/10/13 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (1件) を見る 榎本武揚といえば、私は『土方歳三最後の一日』で片岡愛之助が演じていたあのきざったらしい男…

石川博品『先生とそのお布団』がいろいろと刺さりまくったので感想を書く

先生とそのお布団 (ガガガ文庫) 作者: 石川博品 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2017/11/24 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (4件) を見る 泣けるだけの小説なら世の中にはいくらでもあるし、この『先生とそのお布団』も、ラストに泣ける部分はち…

土橋章宏『幕末まらそん侍』(映画サムライマラソン原作)感想:安心して楽しめるエンタメ時代小説

幕末まらそん侍 (ハルキ文庫) 作者: 土橋章宏 出版社/メーカー: 角川春樹事務所 発売日: 2015/06/13 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (3件) を見る 時代小説というジャンルに期待することがあります。それは、良い人間には良いことがあり、悪い人間には…

『決戦!新撰組』感想:シリーズ中でも読みやすい。幕末小説ファンにはおすすめの一冊

決戦!新選組 作者: 葉室麟,門井慶喜,小松エメル,土橋章宏,天野純希,木下昌輝 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/05/24 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 歴史アンソロジー小説の決戦!シリーズも読んだのはこれで5冊目にな…

NOVA2019春号感想:格ゲー好きな人におすすめの作品も収録

NOVA 2019年春号 (河出文庫 お 20-13) 作者: 大森望 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2018/12/05 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (1件) を見る 『GENESIS 一万年の午後』も最近出たSFアンソロジーだが、ファンタジー作品も収録されて…

伊東潤『江戸を造った男』感想:川村瑞賢の仕事はもっと知られるべき

江戸を造った男 (朝日文庫) 作者: 伊東潤 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2018/10/05 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 見事に生きるとはどういうことか、その答えのひとつがここにある。 河村瑞賢。教科書などで一度は耳にしたことのある…

『GENESIS 一万年の午後』感想:これはSF初心者にもおすすめできる粒揃いのアンソロジー

Genesis 一万年の午後 (創元日本SFアンソロジー) (創元日本SFアンソロジー 1) 作者: 堀晃ほか 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2018/12/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る カクヨムに公開されている名作短編『森島章子は人を撮らない』の…

『決戦!関ヶ原』感想:シリーズ第一作として十分な出来栄え

決戦!関ヶ原 作者: 葉室麟,冲方丁,伊東潤,上田秀人,天野純希,矢野隆,吉川永青 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2014/11/19 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (5件) を見る 歴史アンソロジー集として8作目まで出版されている決戦!シ…

長篠の戦いのアンソロジー小説『決戦!設楽原 武田軍vs.織田・徳川軍』感想

決戦!設楽原 武田軍vs.織田・徳川軍 作者: 赤神諒,佐藤巖太郎,砂原浩太朗,武川佑,簑輪諒,宮本昌孝,山口昌志 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2018/10/18 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 歴史アンソロジーの決戦!シリーズも…

師走トオル『ファイフステル・サーガ』が面白い。骨太な架空世界の戦記を楽しめる

ファイフステル・サーガ 再臨の魔王と聖女の傭兵団 (富士見ファンタジア文庫) 作者: 師走トオル 出版社/メーカー: KADOKAWA / 富士見書房 発売日: 2018/05/20 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る これはひさしぶりに満足度の高かった戦記ファン…

読者に「人間とは何か」を問いかけるダークファンタジー。大澤めぐみ『君は世界災厄の魔女、あるいはひとりぼっちの救世主』

君は世界災厄の魔女、あるいはひとりぼっちの救世主 (角川スニーカー文庫) 作者: 大澤めぐみ,切符 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2018/10/01 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る デビュー作『おにぎりスタッバー』では「石版」とも評されるみっ…

「人生のネタバレ化」で「やりたいこと」という呪いが解ける人もいるかもしれない

minnanohimatubushi.2chblog.jp anond.hatelabo.jp ウェブ小説界隈でちょっと有名らしい人から、こういう言葉を聞いたことがあります。 「創作が苦しいんだったらやめたっていいと思いますよ。何も小説がすべてというわけではないですし。でも、苦しくてもあ…

カクヨムの超おすすめ短編小説が勢揃いしている『第八回本山川小説大賞』のご紹介

これはカクヨムの自主企画なのですが、先日「第八回本山川小説大賞」という企画が行われました。もともとは「本物川小説大賞」として七回まで行われていた企画ですが、今回はラノベ読みVtuberの本山らのさんを審査員に加えているのでこういう名前に変わって…

ケン・リュウ『母の記憶に』は中国史好きにもおすすめできる短編集

母の記憶に (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者: ケンリュウ,牧野千穂,古沢嘉通,幹遙子,市田泉 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2017/04/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (8件) を見る ケン・リュウ『母の記憶に』を読んだ。SF短編集として売ら…

直木賞候補作家・上田早夕里の『夢みる葦笛』はSF初心者にもおすすめできる短編集

夢みる葦笛 作者: 上田早夕里 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2016/09/15 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (3件) を見る 上田早夕里『破滅の王』が第159回直木賞の候補に選ばれた。こちらは歴史小説だが、最近SFが読みたい気分だったので同じ作者の…

北方謙三『チンギス紀』はモンゴル考古学者・白石典之の研究を参考にしている?

チンギス紀 一 火眼 作者: 北方謙三 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2018/05/25 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る 『水滸伝』から『楊令伝』を経て『岳飛伝』に至る壮大なサーガを語り終えた北方謙三が次に挑むのがチンギス・カンの生…

司馬遼太郎のおすすめ作品は『「司馬遼太郎」で学ぶ日本史』を読むとわかる

「司馬遼太郎作品はただのフィクション」と切り捨ててよいか 「司馬遼太郎」で学ぶ日本史 (NHK出版新書 517) posted with ヨメレバ 磯田 道史 NHK出版 2017-05-08 Amazon Kindle 楽天ブックス 楽天kobo 7net 司馬遼太郎という人は特別な作家です。多くの人は…

歴史小説のおすすめ本を20作選んでみる(戦国時代編)

戦国時代という素材は小説ではすでに書きつくされているような印象もありますが、探せばまだまだ面白い作品が見つかるものです。ここでは戦国時代を扱った小説本でおすすめの作品を15作選んでみました。 1.国盗り物語 国盗り物語1~4巻完結セット 発売日: 1…

和田竜『忍びの国』感想:忍者の本質とは何か?

忍びの国 (新潮文庫) 作者: 和田竜 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2011/02/26 メディア: 文庫 購入: 2人 クリック: 5回 この商品を含むブログ (43件) を見る 本作で『のぼうの城』の和田竜が描き出す忍者の世界は、とかく世知辛い。 同じ伊賀の中ですら平…

佐藤賢一『小説フランス革命』が描き出す「男らしさ」コンプレックス

日本人の多くはフランス革命を知らない。それは結局のところ、フランス革命を扱った小説が少ないからだ──と誰かが語っていたことを覚えている。多くの人は歴史書を読んで日本史を学ぶのではなく、大河ドラマや司馬遼太郎から学ぶ。ならフランス革命も誰かが…

似鳥鶏『きみのために青く光る』と銃社会

必要は発明の母というが、実は逆で、発明は必要の母ではないかと思うことがある。 つまり、ある便利な技術が開発されることで、ついその技術を人は使ってしまい、使っているうちにそれが必要不可欠ななものだと錯覚するのではないかということだ。 異能を授…

読者を新たなクトゥルフ沼に誘う一冊──『邪神任侠 家出JCを一晩泊めたら俺の正気度がガリガリ削れた』

世の中にはたくさんの「沼」がある。 鉄道やミリタリー、歴史、哲学、廃墟やSFなどなど、一度はまり込んだら抜け出せないジャンルは枚挙にいとまがない。 そして、中でもとりわけ深い沼のひとつにクトゥルフ神話がある。 それだけに、クトゥルフを題材とした…

カクヨムの新連載小説「ムルムクス」が怖すぎて続きが気になりすぎる件

読みだしたら止まらない小説というものがある。 いつも歴史とファンタジー小説しか読まない自分が、まさかホラーにここまではまるとは思わなかった。 これは一度読んだが最後、続きが気になり、次回の更新を渇望してしまうようになるだろう。文字通り巻を措…