明晰夢工房

読んだ本の備忘録や日頃思ったこと、感じたことなどなど

小説

【感想】じゃき『最凶の支援職【話術士】である俺は世界最強クランを従える』は今一番おすすめのなろう小説

最凶の支援職【話術士】である俺は世界最強クランを従える 1 (オーバーラップ文庫) 作者:じゃき 発売日: 2020/06/25 メディア: Kindle版 一言でなろう小説といってもいろいろなものがあるんだな、というのが一読しての感想だった。本作『最強の支援職【話術…

【感想】天野純希『燕雀の夢』

燕雀の夢 (角川文庫) 作者:天野 純希 発売日: 2020/01/23 メディア: Kindle版 織田信秀、武田信虎、松平広忠など「英雄の父」を主人公とした短編集。6つの短編はどれも読みごたえがあるが、中でも『虎は死すとも』と『楽土の曙光』の二編がとくに印象に残っ…

【感想】宮部みゆき『ぼんくら』の善人描写の巧みさについて語る

ぼんくら(上) (講談社文庫) 作者:宮部 みゆき 発売日: 2004/04/15 メディア: 文庫 ぼんくら(下) (講談社文庫) 作者:宮部 みゆき 発売日: 2004/04/15 メディア: 文庫 いまさら言うまでもなく、宮部みゆきはすぐれたミステリ作家だ。だからもちろん『ぼんくら…

【感想】佐藤巖太郎『会津執権の栄誉』

会津執権の栄誉 (文春文庫) 作者:巖太郎, 佐藤 発売日: 2019/07/10 メディア: 文庫 渋い。この一言につきる。本作は会津芦名家の興亡を描いた連作短編だが、それぞれの作品の主人公は皆あまりなじみのない人物で、大河ドラマの主人公になるような華々しい活…

【感想】青山文平『白樫の樹の下で』

白樫の樹の下で (文春文庫) 作者:青山 文平 発売日: 2013/12/04 メディア: 文庫 貧乏御家人の主人公村上登と冷静で温厚な青木昇平、少々ひねくれたところのある仁志兵輔という二人の友がくりひろげる江戸青春活劇──とまとめてしまうには、この作品はあまりに…

「小説にだけあってマンガや映画やアニメにはない魅力」を示せる人ってなかなかいないよね、という話

小説と同じメリットが漫画にもアニメにもある 小説は君のためにある (ちくまプリマー新書) 作者:藤谷 治 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2018/09/06 メディア: 新書 藤谷治さんの『小説は君のためにある』を読みました。 若い読者に向けて、小説の魅力を…

ジャンル分け不能の怪作『絶対小説(講談社リデビュー賞受賞作)』が小説愛にあふれすぎていて最高だったので感想を書く

絶対小説 (講談社タイガ) 作者:芹沢 政信 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2020/01/22 メディア: 文庫 この小説を何と呼べばいいのだろう。 河童のような人間が出てくるから伝奇か。 いや、謎の肉食植物や四脚駆動のメカが登場するからSFか。 作品全体に漂…

【感想】テッド・チャン『息吹』をSFに苦手意識のある私が読んでみた結果

息吹 作者:テッド・チャン 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2019/12/04 メディア: 単行本 テッド・チャン『息吹』は発売直後から絶賛されているが、私みたいにSFが得意とはいえない読者にもちゃんと読めるのだろうか?と気になっていた。海外SFを読んでい…

【感想】十二国記『白銀の墟 玄の月』3~4巻と「正史の隙間」の物語

白銀の墟 玄の月 第三巻 十二国記 (新潮文庫) 作者:小野 不由美 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2019/11/09 メディア: 文庫 『白銀の墟 玄の月』1~2巻は、戴国がどれだけ悲惨かを書くことにほぼ費やされた。この2巻は、読者の忍耐力が試される巻だった。…

【感想】十二国記『白銀の墟 玄の月』1~2巻

白銀の墟 玄の月 第一巻 十二国記 (新潮文庫) 作者: 小野不由美 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2019/10/12 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 正直なところ、『白銀の墟 玄の月』の1巻については、これが十二国記でなければ最後まで読みとおせた…

【感想】藤沢周平『蝉しぐれ』が時代小説の最高傑作である理由

蝉しぐれ (文春文庫) 作者: 藤沢周平 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2012/09/20 メディア: Kindle版 購入: 2人 クリック: 2回 この商品を含むブログを見る なんという完璧な小説だろう。藤沢周平作品にどれもはずれはないが、その中でもこれは最高傑作…

【感想】澤村伊智短編集『ひとんち』で知る、ホラーにおける小説の強み

ひとんち 澤村伊智短編集 作者: 澤村伊智 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2019/02/19 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 『ぼぎわんが、来る』で有名な澤村伊智のホラー短編集。8つの作品はどれも味わいが違っててそれぞれに楽しめるが、やはり…

『氷と炎の歌』(ゲームオブスローンズ原作)を読んで考えた「小説の強み」

『氷と炎の歌』を先に読んでいると感じる違和感 最近、アマゾンプライムでゲームオブスローンズを観ている。 いまさら言うまでもなく、これは極めてすぐれた映像作品だし、これに多くの人が熱中しているのもよくわかる。 だが、原作小説『氷と炎の歌』シリー…

マクベスとマクベス夫人と「男らしさ」の枷

かつてある大物政治家を暗殺しそこねた右翼青年が「男になりたかった」と漏らしていた記憶がある。男はただ生きているだけでは「男」になれない、「男らしい」何かをなさなくてはならないのだ──こういう価値観は古びてきてはいるものの、それでもなお残ると…

【感想】『鹿の王』の最大の魅力は「あたりまえを活写する力」

鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐ 作者: 上橋菜穂子 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店 発売日: 2014/09/24 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (51件) を見る 鹿の王 (下) ‐‐還って行く者‐‐ 作者: 上橋菜穂子 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店 発売日…

【感想】柳広司『二度読んだ本を三度読む』と「司馬史観」という枷

二度読んだ本を三度読む (岩波新書) 作者: 柳広司 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2019/04/20 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る アニメ化もされた『ジョーカー・ゲーム』などが有名な柳広司さんの書評集。取り上げられている作品は『山月記』…

【感想】『ゼロから始める魔法の書 ゼロの傭兵(上)(下)』

ゼロから始める魔法の書IX ―ゼロの傭兵〈上〉― (電撃文庫) 作者: 虎走かける 出版社/メーカー: KADOKAWA / アスキー・メディアワークス 発売日: 2017/06/09 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る ゼロから始める魔法の書X ―ゼロの傭兵〈下〉― (電…

【感想】虎走かける『魔法使い黎明期 劣等生と杖の魔女』

魔法使い黎明期 劣等生と杖の魔女 (講談社ラノベ文庫) 作者: 虎走かける,しずまよしのり,いわさきたかし 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2018/08/31 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 『ゼロから始める魔法の書』と世界観を同…

【感想】宮西真冬『友達未遂』の圧倒的な「負の人間描写」の上手さに震えた

友達未遂 作者: 宮西真冬 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2019/04/24 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 一読し、「人間が書けているとはこういうことだ」と強く思った。 全寮制の星華高等学校を舞台に四人の少女たちが織り成…

【感想】蓑輪諒『最低の軍師』上杉謙信を相手取る軍師・白井浄三の采配に刮目せよ!

最低の軍師 (祥伝社文庫) 作者: 簑輪諒 出版社/メーカー: 祥伝社 発売日: 2017/09/13 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る これはお見事。臼井城の戦いというマイナーな戦いを主題に持ってきた時点でまず目のつけどころがいい。歴史小説はどうしても…

【感想】6人の戦国武将の「最期の24時間」を描く木下昌輝『戦国24時 さいごの刻』

戦国24時 さいごの刻(とき) 作者: 木下昌輝 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2016/09/15 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 6人の戦国武将の最後の24時間をそれぞれの立場で語る、というちょっと変わった趣向の短編集。 取り上げられる人物は豊…

【感想】師走トオル『ファイフステルサーガ2 再臨の魔王と公国の動乱』

ファイフステル・サーガ2 再臨の魔王と公国の動乱 (ファンタジア文庫) 作者: 師走トオル,有坂あこ 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2018/09/20 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (1件) を見る 1巻は冒頭で魔物との戦いもありましたが、今回は全編人間…

ケン・リュウ『母の記憶に』文庫版と『草を結びて環を銜えん 』が別々に発売

母の記憶に (ハヤカワ文庫SF) 作者: ケン・リュウ,古沢嘉通,幹遙子,市田泉 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2019/05/23 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る ケン・リュウ『母の記憶に』の文庫版がやたら安いと思っていたら、やはり収録されている…

audibleの無料体験期間に『日の名残り』を全部聴いたので感想を書く

audibleを聴けばアマゾンプライム会員なら一月あたりamazonポイントが最大1000ポイント溜まりますよ、という宣伝文句につられてこのサービスを1か月無料体験してみることにしました。 今までオーディオブックというものを聴いたことがなかったのですが、結論…

精霊の守り人外伝『風と行く者』感想:今回はロタ王国を中心とする過去編

風と行く者 (偕成社ワンダーランド) 作者: 上橋菜穂子,佐竹美保 出版社/メーカー: 偕成社 発売日: 2018/11/19 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 守り人シリーズはしばらく短編集の刊行が続いていたが、今度は長編。冒頭でバルサとタンダ…

門井慶喜『かまさん』感想:函館共和国が敗北した理由とは何か

かまさん 榎本武揚と箱館共和国 (祥伝社文庫) 作者: 門井慶喜 出版社/メーカー: 祥伝社 発売日: 2016/10/13 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (1件) を見る 榎本武揚といえば、私は『土方歳三最後の一日』で片岡愛之助が演じていたあのきざったらしい男…

石川博品『先生とそのお布団』がいろいろと刺さりまくったので感想を書く

先生とそのお布団 (ガガガ文庫) 作者: 石川博品 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2017/11/24 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (4件) を見る 泣けるだけの小説なら世の中にはいくらでもあるし、この『先生とそのお布団』も、ラストに泣ける部分はち…

土橋章宏『幕末まらそん侍』(映画サムライマラソン原作)感想:安心して楽しめるエンタメ時代小説

幕末まらそん侍 (ハルキ文庫) 作者: 土橋章宏 出版社/メーカー: 角川春樹事務所 発売日: 2015/06/13 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (3件) を見る 時代小説というジャンルに期待することがあります。それは、良い人間には良いことがあり、悪い人間には…

『決戦!新撰組』感想:シリーズ中でも読みやすい。幕末小説ファンにはおすすめの一冊

決戦!新選組 作者: 葉室麟,門井慶喜,小松エメル,土橋章宏,天野純希,木下昌輝 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/05/24 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 歴史アンソロジー小説の決戦!シリーズも読んだのはこれで5冊目にな…

NOVA2019春号感想:格ゲー好きな人におすすめの作品も収録

NOVA 2019年春号 (河出文庫 お 20-13) 作者: 大森望 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2018/12/05 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (1件) を見る 『GENESIS 一万年の午後』も最近出たSFアンソロジーだが、ファンタジー作品も収録されて…