明晰夢工房

読んだ本の備忘録や日頃思ったこと、感じたことなどなど

小説

【感想】十二国記『白銀の墟 玄の月』1~2巻

白銀の墟 玄の月 第一巻 十二国記 (新潮文庫) 作者: 小野不由美 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2019/10/12 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 正直なところ、『白銀の墟 玄の月』の1巻については、これが十二国記でなければ最後まで読みとおせた…

【感想】藤沢周平『蝉しぐれ』が時代小説の最高傑作である理由

蝉しぐれ (文春文庫) 作者: 藤沢周平 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2012/09/20 メディア: Kindle版 購入: 2人 クリック: 2回 この商品を含むブログを見る なんという完璧な小説だろう。藤沢周平作品にどれもはずれはないが、その中でもこれは最高傑作…

【感想】澤村伊智短編集『ひとんち』で知る、ホラーにおける小説の強み

ひとんち 澤村伊智短編集 作者: 澤村伊智 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2019/02/19 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 『ぼぎわんが、来る』で有名な澤村伊智のホラー短編集。8つの作品はどれも味わいが違っててそれぞれに楽しめるが、やはり…

『氷と炎の歌』(ゲームオブスローンズ原作)を読んで考えた「小説の強み」

『氷と炎の歌』を先に読んでいると感じる違和感 最近、アマゾンプライムでゲームオブスローンズを観ている。 いまさら言うまでもなく、これは極めてすぐれた映像作品だし、これに多くの人が熱中しているのもよくわかる。 だが、原作小説『氷と炎の歌』シリー…

マクベスとマクベス夫人と「男らしさ」の枷

かつてある大物政治家を暗殺しそこねた右翼青年が「男になりたかった」と漏らしていた記憶がある。男はただ生きているだけでは「男」になれない、「男らしい」何かをなさなくてはならないのだ──こういう価値観は古びてきてはいるものの、それでもなお残ると…

【感想】『鹿の王』の最大の魅力は「あたりまえを活写する力」

鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐ 作者: 上橋菜穂子 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店 発売日: 2014/09/24 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (51件) を見る 鹿の王 (下) ‐‐還って行く者‐‐ 作者: 上橋菜穂子 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店 発売日…

【感想】柳広司『二度読んだ本を三度読む』と「司馬史観」という枷

二度読んだ本を三度読む (岩波新書) 作者: 柳広司 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2019/04/20 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る アニメ化もされた『ジョーカー・ゲーム』などが有名な柳広司さんの書評集。取り上げられている作品は『山月記』…

【感想】『ゼロから始める魔法の書 ゼロの傭兵(上)(下)』

ゼロから始める魔法の書IX ―ゼロの傭兵〈上〉― (電撃文庫) 作者: 虎走かける 出版社/メーカー: KADOKAWA / アスキー・メディアワークス 発売日: 2017/06/09 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る ゼロから始める魔法の書X ―ゼロの傭兵〈下〉― (電…

【感想】虎走かける『魔法使い黎明期 劣等生と杖の魔女』

魔法使い黎明期 劣等生と杖の魔女 (講談社ラノベ文庫) 作者: 虎走かける,しずまよしのり,いわさきたかし 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2018/08/31 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 『ゼロから始める魔法の書』と世界観を同…

【感想】宮西真冬『友達未遂』の圧倒的な「負の人間描写」の上手さに震えた

友達未遂 作者: 宮西真冬 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2019/04/24 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 一読し、「人間が書けているとはこういうことだ」と強く思った。 全寮制の星華高等学校を舞台に四人の少女たちが織り成…

【感想】蓑輪諒『最低の軍師』上杉謙信を相手取る軍師・白井浄三の采配に刮目せよ!

最低の軍師 (祥伝社文庫) 作者: 簑輪諒 出版社/メーカー: 祥伝社 発売日: 2017/09/13 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る これはお見事。臼井城の戦いというマイナーな戦いを主題に持ってきた時点でまず目のつけどころがいい。歴史小説はどうしても…

【感想】6人の戦国武将の「最期の24時間」を描く木下昌輝『戦国24時 さいごの刻』

戦国24時 さいごの刻(とき) 作者: 木下昌輝 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2016/09/15 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 6人の戦国武将の最後の24時間をそれぞれの立場で語る、というちょっと変わった趣向の短編集。 取り上げられる人物は豊…

【感想】師走トオル『ファイフステルサーガ2 再臨の魔王と公国の動乱』

ファイフステル・サーガ2 再臨の魔王と公国の動乱 (ファンタジア文庫) 作者: 師走トオル,有坂あこ 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2018/09/20 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (1件) を見る 1巻は冒頭で魔物との戦いもありましたが、今回は全編人間…

ケン・リュウ『母の記憶に』文庫版と『草を結びて環を銜えん 』が別々に発売

母の記憶に (ハヤカワ文庫SF) 作者: ケン・リュウ,古沢嘉通,幹遙子,市田泉 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2019/05/23 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る ケン・リュウ『母の記憶に』の文庫版がやたら安いと思っていたら、やはり収録されている…

audibleの無料体験期間に『日の名残り』を全部聴いたので感想を書く

audibleを聴けばアマゾンプライム会員なら一月あたりamazonポイントが最大1000ポイント溜まりますよ、という宣伝文句につられてこのサービスを1か月無料体験してみることにしました。 今までオーディオブックというものを聴いたことがなかったのですが、結論…

精霊の守り人外伝『風と行く者』感想:今回はロタ王国を中心とする過去編

風と行く者 (偕成社ワンダーランド) 作者: 上橋菜穂子,佐竹美保 出版社/メーカー: 偕成社 発売日: 2018/11/19 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 守り人シリーズはしばらく短編集の刊行が続いていたが、今度は長編。冒頭でバルサとタンダ…

門井慶喜『かまさん』感想:函館共和国が敗北した理由とは何か

かまさん 榎本武揚と箱館共和国 (祥伝社文庫) 作者: 門井慶喜 出版社/メーカー: 祥伝社 発売日: 2016/10/13 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (1件) を見る 榎本武揚といえば、私は『土方歳三最後の一日』で片岡愛之助が演じていたあのきざったらしい男…

石川博品『先生とそのお布団』がいろいろと刺さりまくったので感想を書く

先生とそのお布団 (ガガガ文庫) 作者: 石川博品 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2017/11/24 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (4件) を見る 泣けるだけの小説なら世の中にはいくらでもあるし、この『先生とそのお布団』も、ラストに泣ける部分はち…

土橋章宏『幕末まらそん侍』(映画サムライマラソン原作)感想:安心して楽しめるエンタメ時代小説

幕末まらそん侍 (ハルキ文庫) 作者: 土橋章宏 出版社/メーカー: 角川春樹事務所 発売日: 2015/06/13 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (3件) を見る 時代小説というジャンルに期待することがあります。それは、良い人間には良いことがあり、悪い人間には…

『決戦!新撰組』感想:シリーズ中でも読みやすい。幕末小説ファンにはおすすめの一冊

決戦!新選組 作者: 葉室麟,門井慶喜,小松エメル,土橋章宏,天野純希,木下昌輝 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/05/24 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 歴史アンソロジー小説の決戦!シリーズも読んだのはこれで5冊目にな…

NOVA2019春号感想:格ゲー好きな人におすすめの作品も収録

NOVA 2019年春号 (河出文庫 お 20-13) 作者: 大森望 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2018/12/05 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (1件) を見る 『GENESIS 一万年の午後』も最近出たSFアンソロジーだが、ファンタジー作品も収録されて…

伊東潤『江戸を造った男』感想:川村瑞賢の仕事はもっと知られるべき

江戸を造った男 (朝日文庫) 作者: 伊東潤 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2018/10/05 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 見事に生きるとはどういうことか、その答えのひとつがここにある。 河村瑞賢。教科書などで一度は耳にしたことのある…

『GENESIS 一万年の午後』感想:これはSF初心者にもおすすめできる粒揃いのアンソロジー

Genesis 一万年の午後 (創元日本SFアンソロジー) (創元日本SFアンソロジー 1) 作者: 堀晃ほか 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2018/12/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る カクヨムに公開されている名作短編『森島章子は人を撮らない』の…

『決戦!関ヶ原』感想:シリーズ第一作として十分な出来栄え

決戦!関ヶ原 作者: 葉室麟,冲方丁,伊東潤,上田秀人,天野純希,矢野隆,吉川永青 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2014/11/19 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (5件) を見る 歴史アンソロジー集として8作目まで出版されている決戦!シ…

長篠の戦いのアンソロジー小説『決戦!設楽原 武田軍vs.織田・徳川軍』感想

決戦!設楽原 武田軍vs.織田・徳川軍 作者: 赤神諒,佐藤巖太郎,砂原浩太朗,武川佑,簑輪諒,宮本昌孝,山口昌志 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2018/10/18 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 歴史アンソロジーの決戦!シリーズも…

師走トオル『ファイフステル・サーガ』が面白い。骨太な架空世界の戦記を楽しめる

ファイフステル・サーガ 再臨の魔王と聖女の傭兵団 (富士見ファンタジア文庫) 作者: 師走トオル 出版社/メーカー: KADOKAWA / 富士見書房 発売日: 2018/05/20 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る これはひさしぶりに満足度の高かった戦記ファン…

読者に「人間とは何か」を問いかけるダークファンタジー。大澤めぐみ『君は世界災厄の魔女、あるいはひとりぼっちの救世主』

君は世界災厄の魔女、あるいはひとりぼっちの救世主 (角川スニーカー文庫) 作者: 大澤めぐみ,切符 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2018/10/01 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る デビュー作『おにぎりスタッバー』では「石版」とも評されるみっ…

「人生のネタバレ化」で「やりたいこと」という呪いが解ける人もいるかもしれない

minnanohimatubushi.2chblog.jp anond.hatelabo.jp ウェブ小説界隈でちょっと有名らしい人から、こういう言葉を聞いたことがあります。 「創作が苦しいんだったらやめたっていいと思いますよ。何も小説がすべてというわけではないですし。でも、苦しくてもあ…

カクヨムの超おすすめ短編小説が勢揃いしている『第八回本山川小説大賞』のご紹介

これはカクヨムの自主企画なのですが、先日「第八回本山川小説大賞」という企画が行われました。もともとは「本物川小説大賞」として七回まで行われていた企画ですが、今回はラノベ読みVtuberの本山らのさんを審査員に加えているのでこういう名前に変わって…

ケン・リュウ『母の記憶に』は中国史好きにもおすすめできる短編集

母の記憶に (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者: ケンリュウ,牧野千穂,古沢嘉通,幹遙子,市田泉 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2017/04/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (8件) を見る ケン・リュウ『母の記憶に』を読んだ。SF短編集として売ら…