明晰夢工房

読んだ本の備忘録や日頃思ったこと、感じたことなどなど

歴史

【書評】「ほとんどの人は本質的ににかなり善良だ」と主張する30代歴史学者の著作『Humankind 希望の歴史 上 人類が善き未来をつくるための18章』

Humankind 希望の歴史 上 人類が善き未来をつくるための18章 (文春e-book) 作者:ルトガー・ブレグマン 文藝春秋 Amazon 人間の本質は善か悪か。この問題について、古今の多くの哲学者が議論してきた。西洋思想において性悪説の代表者はホッブズ、性善説の代…

kindle unlimitedが2ヶ月99円キャンペーン開催中なので古典を読みたい人におすすめしてみる

プライム会員限定なのかよくわかりませんが、kindle unlimitedが2ヶ月99円のキャンペーンを開催中です。 前回(2020年年末ごろ)のキャンペーンは2ヶ月299円だったので、これにくらべてもかなりお得です。 このサービスは、古典がたくさん読みたい人には間違…

【感想】菊池英明『太平天国 皇帝なき中国の挫折』

太平天国――皇帝なき中国の挫折 (岩波新書 新赤版 1862) 作者:菊池 秀明 発売日: 2020/12/19 メディア: 新書 なぜ太平天国軍は清朝にかわり、中国の支配者になれなかったのか。そう問いを立てつつこの本を読みはじめた。読み進めると、太平天国側の体制にはあ…

オオカミはどんな過程を経てイヌになったのか?アリス・ロバーツ『飼いならす──世界を変えた10種の動植物』

飼いならす――世界を変えた10種の動植物 作者:アリス ロバーツ 発売日: 2020/10/16 メディア: 単行本 イヌと人間とのかかわりは、従来思われていたより古いようだ。この本ではアルタイ山脈のラズボイニクヤ洞窟でみつかった動物の頭蓋骨を紹介しているが、3万…

【感想】吉川弘文館東北の中世史5『東北近世の胎動』

東北近世の胎動 (東北の中世史) 作者: 出版社/メーカー: 吉川弘文館 発売日: 2016/02/19 メディア: 単行本 吉川弘文館から刊行されている『東北の中世史』の最終巻だが、これは東北の城郭や伊達氏の統治に関心のある方にはぜひ読んでもらいたい。というのも…

岩波新書からシリーズ中国史が全5巻で刊行開始

11月からシリーズ中国史が刊行開始です。第1巻『中華の成立 唐代まで』渡辺信一郎第2巻『江南の発展 南宋まで』丸橋充拓第3巻『草原の制覇 大モンゴルまで』古松崇志第4巻『陸海の交錯 明朝の興亡』檀上寛第5巻『「中国」の形成 現代への展望』岡本隆司※時代…

旧約聖書の面白さはもっと知られるべき。阿刀田高『旧約聖書を知っていますか』で旧約聖書の一番おいしいところがわかる

旧約聖書を知っていますか (新潮文庫) 作者: 阿刀田高 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1994/12/20 メディア: 文庫 購入: 12人 クリック: 85回 この商品を含むブログ (85件) を見る 大学生一年生のとき、旧約聖書学という授業を取ったことがある。先生はい…

ヴァイキングの歴史や文化を知るためのおすすめ本5冊

ヴィンランド・サガのアニメも始まるので、ヴァイキング関連で今まで読んだものの中からおすすめ本を紹介することにします。ヴァイキング本の中でもなるべく内容がかぶらないものを選んでみました。 1.図説ヴァイキングの歴史 図説 ヴァイキングの歴史 作…

【書評】『世界の辺境とハードボイルド室町時代』文庫版の「近未来日本に中学氏族が出現する」という話が面白い

世界の辺境とハードボイルド室町時代 (集英社文庫) 作者: 高野秀行,清水克行 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2019/05/17 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る この本の面白さはもうあちこちで語られ尽くしている気もするし、実際一度手に取ったが最…

【書評】岩波シリーズアメリカ合衆国史1『植民地から建国へ』

植民地から建国へ 19世紀初頭まで (岩波新書) 作者: 和田光弘 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2019/04/20 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 岩波新書から「シリーズアメリカ合衆国史」シリーズの刊行が始まりましたが、これはその1冊目になり…

【感想】『世にも危険な医療の世界史』の衝撃的すぎる内容を紹介する

世にも危険な医療の世界史 作者: リディアケイン,ネイトピーダーセン,福井久美子 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2019/04/18 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 健康法の歴史は古い。今でも健康オタクはたくさんいるが、科学の未発達な時代の…

『世界歴史大系 ロシア史1』と「タタールのくびき」

ロシア史〈1〉9~17世紀 (世界歴史大系) 作者: 田中陽児,倉持俊一,和田春樹 出版社/メーカー: 山川出版社 発売日: 1995/09/01 メディア: 単行本 クリック: 2回 この商品を含むブログ (1件) を見る ロシア史の本は案外日本には少なくて、とくにキエフ公国時代…

英雄たちの選択がついに世界史に進出!「ナバテアvsローマ帝国」

NHKBS「英雄たちの選択」が世界史ネタを取り上げるのは番組6年目にして初めてだそうですが、磯田さんは番組当初から世界史も取り上げたかったようですね。 ナバテア王国のことは名前くらいしか知らなかったのですが、番組で取り上げられていたナバテアの都市…

【書評】藤田覚『岩波シリーズ日本近世史5 幕末から維新へ』

幕末から維新へ〈シリーズ 日本近世史 5〉 (岩波新書) 作者: 藤田覚 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2015/05/21 メディア: 新書 この商品を含むブログ (5件) を見る これは岩波新書日本近世史シリーズの中でも出色の出来。タイトルに幕末と入っているも…

【書評】出口治明『人類5000年史Ⅱ』

人類5000年史II (ちくま新書) 作者: 出口治明 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2018/12/06 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 出口治明氏による世界史通史の2冊目は期限元年~1000年ころまでを扱っています。内容としては1冊目同様年代ごとに各…

【書評】出口治明『人類5000年史Ⅰ』呂不韋はソグド人だった……?

人類5000年史I: 紀元前の世界 (ちくま新書) 作者: 出口治明 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2017/11/08 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 一年に一冊づつ刊行される予定らしく、現在2冊目まで発売されている出口治明氏の世界史通史。 1冊目の…

岩波ジュニア新書『情熱でたどるスペイン史』はスペイン史入門としておすすめの一冊

情熱でたどるスペイン史 (岩波ジュニア新書) 作者: 池上俊一 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2019/01/23 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 第一次大戦後から行われてきた世論調査では、ヨーロッパ各国では国民が一番好きな色は青になるそうで…

ローマの敵側の視点から歴史を描くドラマ『バーバリアンズ・ライジング~ローマ帝国に反逆した戦士たち~』の観応えがすごい

huluで『バーバリアンズ・ライジング』という歴史ドラマを観ているのですが、これが実にクオリティが高くて見ごたえがあります。1話1時間ほどのドラマが8話にわたって続くのですが、それぞれのストーリーの主人公はすべてハンニバルやブーディカ、アッティ…

映画『キングダム・オブ・ヘブン』感想:史劇ファン必見の超大作!

キングダム・オブ・ヘブン/ディレクターズ・カット (2枚組) [AmazonDVDコレクション] 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 発売日: 2018/03/16 メディア: DVD この商品を含むブログを見る まさしく重量級。村の鍛冶屋…

映画『マイケル・コリンズ』感想:アイルランド独立の闘士の生涯はひたすらに重い

マイケル・コリンズ [Blu-ray] 出版社/メーカー: ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント 発売日: 2016/04/06 メディア: Blu-ray この商品を含むブログを見る ひたすら苦く、重苦しい。 リーアム・ニーソン演じるアイルランド独立運動の闘士マイケ…

映画『第九軍団のワシ』感想:ローマ軍人とブリガンテス族の少年の友情を描いた良作

第九軍団のワシ スペシャル・エディション [DVD] 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン 発売日: 2013/11/08 メディア: DVD この商品を含むブログ (5件) を見る 最近の作品に比べれば地味な映画だが、とても良かった。 サトクリ…

映画『アレクサンドリア』(感想)

アレクサンドリア [DVD] 出版社/メーカー: ギャガ 発売日: 2016/12/02 メディア: DVD この商品を含むブログ (2件) を見る ここまでキリスト教の負の側面をはっきり描いている映画もあまりないんじゃないかなぁ……というのが正直な感想。『クォ・ヴァディス』…

「肉食」をキーワードとした比較文明論『肉食の思想 ヨーロッパ精神の再発見』は中公新書屈指の名著

肉食の思想―ヨーロッパ精神の再発見 (中公新書 (92)) 作者: 鯖田豊之 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 1966/01/01 メディア: 新書 購入: 5人 クリック: 32回 この商品を含むブログ (20件) を見る 初版は1966年と古いですが、これは何年経っても色褪せ…

ヤグノブ人とソグドに関するメモ

BSプレミアム「シルクロード謎の民 大渓谷に生きる」でヤグノブ人のドキュメンタリーを放映していた。主に伝統的な牧畜を生業としているヤグノブ人だが、ヤグノブの言葉にはソグドごと共通する単語が300以上あるのだという。結婚式のときに新郎新婦が火の周…

明晰夢工房選・2018年のおすすめ新書ベスト5

今年もいろいろな本を読みましたが、今年読んだ本ではとくに新書が豊作だったので、2018年に発売された新書のベスト5を紹介します。このブログなのでどうしてもジャンルが歴史系に偏りますがそこはご容赦を。 呉座勇一『陰謀の日本中世史』 saavedra.hatenab…

キットカットに溝が刻まれているのはなぜ?『チョコレートの世界史 近代ヨーロッパが磨き上げた褐色の宝石』でたどるチョコレートの歴史

チョコレートの世界史―近代ヨーロッパが磨き上げた褐色の宝石 (中公新書) 作者: 武田尚子 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2010/12/01 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 28回 この商品を含むブログ (26件) を見る これ一冊でアステカ帝国時代か…

妻を3度も寝取られた田舎貴族の裁判を扱った『姦通裁判』が名著だった

姦通裁判 ―18世紀トランシルヴァニアの村の世界― (星海社新書) 作者: 秋山晋吾 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2018/04/27 メディア: 新書 この商品を含むブログ (1件) を見る こういうものを読むと、星海社はほんとうにいい仕事をしているなと思いますね…

ゆうきまさみ『新九郎、奔る!』が掘り進む「室町時代という鉱脈」

新九郎、奔る! (1) (ビッグコミックススペシャル) 作者: ゆうきまさみ 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2018/08/09 メディア: コミック この商品を含むブログ (4件) を見る ゆうきまさみ氏の『新九郎、奔る!』1巻を読みました。 この作品の冒頭は、38歳に…

中世ヨーロッパの生活や服装・食事を知るためのおすすめ本20冊

歴史関連の本はどうしても政治史について書いているものが中心になりがちですが、幸い中世ヨーロッパ史については生活史についての著書も多く出版されています。これらの本は政治史を補完する内容として興味深いだけでなく、ファンタジー創作のための資料と…

ケン・リュウ『母の記憶に』は中国史好きにもおすすめできる短編集

母の記憶に (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者: ケンリュウ,牧野千穂,古沢嘉通,幹遙子,市田泉 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2017/04/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (8件) を見る ケン・リュウ『母の記憶に』を読んだ。SF短編集として売ら…