明晰夢工房

読んだ本の備忘録や日頃思ったこと、感じたことなどなど

読書

ジャンル分け不能の怪作『絶対小説(講談社リデビュー賞受賞作)』が小説愛にあふれすぎていて最高だったので感想を書く

絶対小説 (講談社タイガ) 作者:芹沢 政信 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2020/01/22 メディア: 文庫 この小説を何と呼べばいいのだろう。 河童のような人間が出てくるから伝奇か。 いや、謎の肉食植物や四脚駆動のメカが登場するからSFか。 作品全体に漂…

【書評】岩波新書シリーズ中国の歴史1『中華の成立 唐代まで』

中華の成立: 唐代まで (岩波新書) 作者:渡辺 信一郎 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2019/11/21 メディア: 新書 これは概説書としてみればかなり硬い部類になる。初学者がいきなり読めるものではない。物語性を求める読者にはまったく向いていないが、学…

士農工商も赤穂浪士も教科書から消えていく『ここまで変わった日本史教科書』

ここまで変わった日本史教科書 作者:高橋 秀樹,三谷 芳幸,村瀬 信一 出版社/メーカー: 吉川弘文館 発売日: 2016/08/25 メディア: 単行本 これを読んでいると、かつて学んだ「日本史」の内容も少しづつ変わってきていることがわかる。今は「鎖国」という言葉…

【感想】情熱だけでは勝てなくなったときどの見つけた勝利法『世界一のプロゲーマーがやっている 努力2.0 』

世界一のプロゲーマーがやっている 努力2.0 作者:ときど 出版社/メーカー: ダイヤモンド社 発売日: 2019/12/05 メディア: 単行本(ソフトカバー) 東大卒プロゲーマー・ときどの勝利法は、もともとは東大入試攻略法と似たようなものだった。格闘ゲームの新タ…

奴隷狩り・人身売買・略奪……戦国時代の「民衆のリアル」を活写する『雑兵たちの戦場』

【新版】 雑兵たちの戦場 中世の傭兵と奴隷狩り (朝日選書(777)) 作者:藤木 久志 出版社/メーカー: 朝日新聞社 発売日: 2005/06/10 メディア: 単行本 ルイス・フロイスは『ヨーロッパ文化と日本文化』において「われらにおいては、土地や都市や村落、および…

伊東潤『敗者烈伝』における明智光秀の評価

敗者烈伝 (実業之日本社文庫) 作者:伊東 潤 出版社/メーカー: 実業之日本社 発売日: 2019/10/04 メディア: 文庫 「汁二杯」のエピソードのせいでどうしても良いイメージを持たれない北条氏政だが、この本においては意外と評価が高い。上杉謙信との間に結ばれ…

【感想】鴻上尚史『「空気」を読んでも従わない』と小声で歌う"This is me"

「空気」を読んでも従わない: 生き苦しさからラクになる (岩波ジュニア新書) 作者:鴻上 尚史 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2019/04/20 メディア: 新書 先日、ユーチューブで『グレイテスト・ショーマン』の劇中歌"This is me"の動画を観ていた。なんど…

【感想】テッド・チャン『息吹』をSFに苦手意識のある私が読んでみた結果

息吹 作者:テッド・チャン 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2019/12/04 メディア: 単行本 テッド・チャン『息吹』は発売直後から絶賛されているが、私みたいにSFが得意とはいえない読者にもちゃんと読めるのだろうか?と気になっていた。海外SFを読んでい…

【感想】十二国記『白銀の墟 玄の月』3~4巻と「正史の隙間」の物語

白銀の墟 玄の月 第三巻 十二国記 (新潮文庫) 作者:小野 不由美 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2019/11/09 メディア: 文庫 『白銀の墟 玄の月』1~2巻は、戴国がどれだけ悲惨かを書くことにほぼ費やされた。この2巻は、読者の忍耐力が試される巻だった。…

山川出版社 歴史の転換期1『B.C.220 帝国と世界史の誕生』に見るローマ帝国のブリテン島支配の実態

B.C.220年 帝国と世界史の誕生 (歴史の転換期) 作者:藤井 崇,宮嵜 麻子,宮宅 潔 出版社/メーカー: 山川出版社 発売日: 2018/04/28 メディア: 単行本 2018年以降、山川出版社から順次刊行されている歴史の転換期シリーズの1巻。最初の巻となる『B.C.220 帝国…

【感想】本郷和人『乱と変の日本史』

乱と変の日本史 (祥伝社新書) 作者:本郷 和人 出版社/メーカー: 祥伝社 発売日: 2019/03/01 メディア: 新書 平将門から島原の乱にいたるまで多くの「乱」と「変」を扱った内容になっているが、序の「乱と変から何がわかるか」を読むと、意外なことに「乱」と…

【感想】テンプル騎士団を知りたいならまずはこの本。佐藤賢一『テンプル騎士団』

テンプル騎士団 (集英社新書) 作者:佐藤 賢一 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2018/07/13 メディア: 新書 アサシンクリードでは悪役側で、とかく怪しげなイメージを持たれがちなテンプル騎士団だが、その実態はどんなものだったか?それを知りたいなら、ま…

【感想】金成隆一『ルポトランプ王国2 ラストベルト再訪』と南部白人の「ディープ・ストーリー」

ルポ トランプ王国2: ラストベルト再訪 (岩波新書) 作者:金成 隆一 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2019/09/21 メディア: 新書 前作に引き続き、大変読みごたえのあるルポだった。著者はラストベルトと郊外、バイブルベルトの3カ所を訪ね歩き多くのトラ…

【感想】吉川弘文館東北の中世史5『東北近世の胎動』

東北近世の胎動 (東北の中世史) 作者: 出版社/メーカー: 吉川弘文館 発売日: 2016/02/19 メディア: 単行本 吉川弘文館から刊行されている『東北の中世史』の最終巻だが、これは東北の城郭や伊達氏の統治に関心のある方にはぜひ読んでもらいたい。というのも…

明智光秀「仏のうそを方便といい、武士のうそを武略という」←なぜここだけ抜き出すのか

武士の日本史 (岩波新書) 作者: 高橋昌明 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2018/05/23 メディア: 新書 この商品を含むブログ (2件) を見る 明智光秀が「仏のうそを方便と云い、武士のうそを武略と云う」と公言したという話が『老人雑話』には載っている。…

【書評】『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365 レビュー 人物編』の「悪人」の項目には誰が入っているのか?

1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365 人物編 作者: デイヴィッド・S・キダー,ノア・D・オッペンハイム,パリジェン聖絵 出版社/メーカー: 文響社 発売日: 2019/04/12 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る このシリーズ、ど…

【感想】三崎律日『奇書の世界史』に書かれたダーガーの意外な実像

奇書の世界史 歴史を動かす“ヤバい書物”の物語 作者: 三崎律日 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2019/08/23 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る かつてと学会は、「著者の意図とは別の視点から笑える本」をトンデモ本と定義していた。本書で紹…

【感想】鴻上尚史『孤独と不安のレッスン』に「ほがらか人生相談」の原点を見た

孤独と不安のレッスン (だいわ文庫) 作者: 鴻上尚史 出版社/メーカー: 大和書房 発売日: 2011/02/09 メディア: 文庫 購入: 8人 クリック: 21回 この商品を含むブログ (13件) を見る この本を読んでいて、ファストフード店で一人で食事している男性を撮影し、…

【感想】内山昭一『昆虫は美味い!』

昆虫は美味い! (新潮新書) 作者: 内山昭一,長畑直和,畠山モグ 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2019/01/16 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 昆虫食といえばこの人、内山昭一氏による昆虫食の雑学本。 わざわざ食べる人がいるからには、昆虫食は…

孔子が論語で語った名言にどれくらい「そうだよな」と言えるか

もう20年くらい前のことだと思うが、酒見賢一が雑誌のインタビューで「論語に書いてあることって、そうだよなって思うことが多いですよね。親の年齢を知らないようではいけないとか」と答えていたのを覚えている。おそらくは『陋巷に在り』に関係するインタ…

【感想】貴堂嘉之『南北戦争の時代 19世紀(シリーズアメリカ合衆国史2)』

南北戦争の時代 19世紀 (岩波新書) 作者: 貴堂嘉之 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2019/07/20 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 岩波新書のシリーズアメリカ合衆国史の2冊目。わかりやすく読みやすい。第1章では西漸運動の展開について書かれ…

【感想】『世界をおどらせた地図 欲望と蛮勇が生んだ冒険の物語』は探検家列伝として読める本

世界をおどらせた地図 作者: エドワード・ブルック=ヒッチング,ナショナルジオグラフィック,関谷冬華 出版社/メーカー: 日経ナショナルジオグラフィック社 発売日: 2019/09/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る ナショナルジオグラフィック社の…

瀧本哲史『武器としての交渉思考』と人間関係における「コモディティ人材」について

武器としての交渉思考 (星海社新書) 作者: 瀧本哲史 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2012/06/26 メディア: 新書 購入: 3人 クリック: 64回 この商品を含むブログ (52件) を見る 瀧本哲史の『武器としての交渉思考』には、労使交渉において「コモディティ人…

【書評】北條芳隆(編)『考古学講義』

考古学講義 (ちくま新書) 作者: 北條芳隆 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2019/05/07 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る ちくま新書の歴史講義シリーズのなかの一冊。 先史時代から古墳時代までをカバーする14のトピックはどれも興味深いものば…

『鴻上尚史のほがらか人生相談』に学ぶ、人の悩みを聞く極意

鴻上尚史のほがらか人生相談 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋 作者: 鴻上尚史 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2019/09/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る ネットで大評判の人生相談が書籍化 AERA.dotでの連載を読んでいた人ならわ…

縄文文化は『文明』ではない──山田康弘(監修)『縄文時代の不思議と謎』

縄文時代の不思議と謎 (じっぴコンパクト新書) 作者: 山田康弘 出版社/メーカー: 実業之日本社 発売日: 2019/01/08 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る もう20年以上前のことになるが、三内丸山遺跡を見に行った時の衝撃はいまだに忘れられない。300…

岩波新書からシリーズ中国史が全5巻で刊行開始

11月からシリーズ中国史が刊行開始です。第1巻『中華の成立 唐代まで』渡辺信一郎第2巻『江南の発展 南宋まで』丸橋充拓第3巻『草原の制覇 大モンゴルまで』古松崇志第4巻『陸海の交錯 明朝の興亡』檀上寛第5巻『「中国」の形成 現代への展望』岡本隆司※時代…

『氷と炎の歌』(ゲームオブスローンズ原作)を読んで考えた「小説の強み」

『氷と炎の歌』を先に読んでいると感じる違和感 最近、アマゾンプライムでゲームオブスローンズを観ている。 いまさら言うまでもなく、これは極めてすぐれた映像作品だし、これに多くの人が熱中しているのもよくわかる。 だが、原作小説『氷と炎の歌』シリー…

旧約聖書の面白さはもっと知られるべき。阿刀田高『旧約聖書を知っていますか』で旧約聖書の一番おいしいところがわかる

旧約聖書を知っていますか (新潮文庫) 作者: 阿刀田高 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1994/12/20 メディア: 文庫 購入: 12人 クリック: 85回 この商品を含むブログ (85件) を見る 大学生一年生のとき、旧約聖書学という授業を取ったことがある。先生はい…

ヴァイキングの歴史や文化を知るためのおすすめ本5冊

ヴィンランド・サガのアニメも始まるので、ヴァイキング関連で今まで読んだものの中からおすすめ本を紹介することにします。ヴァイキング本の中でもなるべく内容がかぶらないものを選んでみました。 1.図説ヴァイキングの歴史 図説 ヴァイキングの歴史 作…