明晰夢工房

読んだ本の備忘録や日頃思ったこと、感じたことなどなど

読書

【書評】出口治明『人類5000年史Ⅱ』

人類5000年史II (ちくま新書) 作者: 出口治明 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2018/12/06 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 出口治明氏による世界史通史の2冊目は期限元年~1000年ころまでを扱っています。内容としては1冊目同様年代ごとに各…

【書評】出口治明『人類5000年史Ⅰ』呂不韋はソグド人だった……?

人類5000年史I: 紀元前の世界 (ちくま新書) 作者: 出口治明 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2017/11/08 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 一年に一冊づつ刊行される予定らしく、現在2冊目まで発売されている出口治明氏の世界史通史。 1冊目の…

岩波ジュニア新書『情熱でたどるスペイン史』はスペイン史入門としておすすめの一冊

情熱でたどるスペイン史 (岩波ジュニア新書) 作者: 池上俊一 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2019/01/23 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 第一次大戦後から行われてきた世論調査では、ヨーロッパ各国では国民が一番好きな色は青になるそうで…

磯田道史『武士の家計簿』はやはり傑作だった

武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書) 作者: 磯田道史 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2003/04/10 メディア: 新書 購入: 16人 クリック: 113回 この商品を含むブログ (152件) を見る 磯田ファンのひとりとしてはとっくに読んでいなくて…

室町時代を「土地開発の飽和状態」から解説するおすすめ入門本『室町幕府と地方の社会』

室町幕府と地方の社会〈シリーズ日本中世史 3〉 (岩波新書) 作者: 榎原雅治 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2016/05/21 メディア: 新書 この商品を含むブログ (9件) を見る このコンパクトな分量で複雑な室町時代をカバーできるのだろうか?と思いつつ読…

水戸藩にラーメンが伝わった事情とは?『水戸黄門の食卓 元禄の食事情』

水戸黄門の食卓―元禄の食事情 (中公新書) 作者: 小菅桂子 出版社/メーカー: 中央公論社 発売日: 1992/01 メディア: 新書 この商品を含むブログ (4件) を見る 現在では室町時代にすでにラーメンが食べられていたことが知られていて、水戸光圀は「日本で最初に…

明・清と同時代のモンゴルやチベットの歴史を知りたい人におすすめの講談社学術文庫『紫禁城の栄光』

紫禁城の栄光―明・清全史 (講談社学術文庫) 作者: 岡田英弘,神田信夫,松村潤 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2006/10/11 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 3回 この商品を含むブログ (14件) を見る 明・清代の歴史の概説書としては講談社の中国の歴史シ…

「肉食」をキーワードとした比較文明論『肉食の思想 ヨーロッパ精神の再発見』は中公新書屈指の名著

肉食の思想―ヨーロッパ精神の再発見 (中公新書 (92)) 作者: 鯖田豊之 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 1966/01/01 メディア: 新書 購入: 5人 クリック: 32回 この商品を含むブログ (20件) を見る 初版は1966年と古いですが、これは何年経っても色褪せ…

セミの抜け殻を取られたので切腹!氏家幹人『江戸藩邸物語』が描く武士道の実態

江戸藩邸物語―戦場から街角へ (中公新書) 作者: 氏家幹人 出版社/メーカー: 中央公論社 発売日: 1988/06 メディア: 新書 購入: 1人 クリック: 2回 この商品を含むブログ (5件) を見る 『応仁の乱』のヒット以降室町時代にスポットライトが当たっているためか…

伊東潤『幕末雄藩列伝』を読んで幕末維新の人物評価の難しさについて考えた

幕末雄藩列伝 (角川新書) 作者: 伊東潤 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2017/11/10 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 直木賞作家・伊藤潤さんが幕末の十四の藩をとりあげ、その動向について解説している本。薩長土肥など勝ち組から会津・庄内…

江戸時代の百姓の暮らしが裁判でわかる。渡辺尚志『武士に「もの言う」百姓たち』

武士に「もの言う」百姓たち―裁判でよむ江戸時代 作者: 渡辺尚志 出版社/メーカー: 草思社 発売日: 2012/12/01 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る 近代以前では、裁判の記録は庶民の生活を知る重要な手がかりになります。とくに江戸時代で…

自己責任論を押し付けられる明治時代は本当にしんどい。松沢裕作『生きづらい明治社会 不安と競争の時代』

生きづらい明治社会――不安と競争の時代 (岩波ジュニア新書) 作者: 松沢裕作 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2018/09/21 メディア: 新書 この商品を含むブログ (6件) を見る これは間違いなく名著。岩波ジュニア新書には時折「これはどう見ても大人向けで…

後醍醐天皇が明治維新に与えた巨大な影響を描く兵藤裕己『後醍醐天皇』

後醍醐天皇 (岩波新書) 作者: 兵藤裕己 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2018/04/21 メディア: 新書 この商品を含むブログ (3件) を見る 後醍醐天皇の評伝としては最も新しい本。どうしても太平記のイメージに引きずられがちな人物ですが、本書を読めば後…

明晰夢工房選・2018年のおすすめ新書ベスト5

今年もいろいろな本を読みましたが、今年読んだ本ではとくに新書が豊作だったので、2018年に発売された新書のベスト5を紹介します。このブログなのでどうしてもジャンルが歴史系に偏りますがそこはご容赦を。 呉座勇一『陰謀の日本中世史』 saavedra.hatenab…

蜀という「ブラック国家」の実態を描く『劉備と諸葛亮 カネ勘定の「三国志」』

劉備と諸葛亮 カネ勘定の『三国志』 (文春新書) 作者: 柿沼陽平 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2018/05/18 メディア: 新書 この商品を含むブログ (1件) を見る 帯では『三国志の「英雄」は全員悪人!?』と煽っていますが、読んでみるとそれほど劉備や…

キットカットに溝が刻まれているのはなぜ?『チョコレートの世界史 近代ヨーロッパが磨き上げた褐色の宝石』でたどるチョコレートの歴史

チョコレートの世界史―近代ヨーロッパが磨き上げた褐色の宝石 (中公新書) 作者: 武田尚子 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2010/12/01 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 28回 この商品を含むブログ (26件) を見る これ一冊でアステカ帝国時代か…

妻を3度も寝取られた田舎貴族の裁判を扱った『姦通裁判』が名著だった

姦通裁判 ―18世紀トランシルヴァニアの村の世界― (星海社新書) 作者: 秋山晋吾 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2018/04/27 メディア: 新書 この商品を含むブログ (1件) を見る こういうものを読むと、星海社はほんとうにいい仕事をしているなと思いますね…

師走トオル『ファイフステル・サーガ』が面白い。骨太な架空世界の戦記を楽しめる

ファイフステル・サーガ 再臨の魔王と聖女の傭兵団 (富士見ファンタジア文庫) 作者: 師走トオル 出版社/メーカー: KADOKAWA / 富士見書房 発売日: 2018/05/20 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る これはひさしぶりに満足度の高かった戦記ファン…

魏志倭人伝は日本を褒める根拠となり得るのか?という話

togetter.com 百田尚樹氏の『日本国紀』の内容があちこちで話題になっていますが、上記のまとめを読んで気になったことは、この本が魏志倭人伝の記述を用いて日本人を褒めているという点です。 倭国伝 全訳注 中国正史に描かれた日本 (講談社学術文庫) 作者:…

中世ヨーロッパの生活や服装・食事を知るためのおすすめ本20冊

歴史関連の本はどうしても政治史について書いているものが中心になりがちですが、幸い中世ヨーロッパ史については生活史についての著書も多く出版されています。これらの本は政治史を補完する内容として興味深いだけでなく、ファンタジー創作のための資料と…

『食い意地クン』に久住昌之の凄さを見る

食い意地クン (新潮文庫) 作者: 久住昌之 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2013/10/28 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (7件) を見る 一見なんてことない食い物エッセイのようにみえるし、そのように読むこともできる。でもじっくり読んでみると、 や…

半藤一利『昭和史 1926-1945』と近衛文麿の評価について

昭和史 1926-1945 (平凡社ライブラリー) 作者: 半藤一利 出版社/メーカー: 平凡社 発売日: 2009/06/11 メディア: 単行本(ソフトカバー) 購入: 11人 クリック: 125回 この商品を含むブログ (107件) を見る 語りおろしなので読みやすいが、それでも読み終え…

万人敵・震天雷・流星錘……バラエティ豊かな中国史上の兵器を網羅した『Truth in FantasyⅧ 武器と防具 中国編』

武器と防具〈中国編〉 (Truth In Fantasy) 作者: 篠田耕一 出版社/メーカー: 新紀元社 発売日: 1992/05/01 メディア: 単行本 購入: 3人 クリック: 7回 この商品を含むブログ (4件) を見る 表意文字である漢字の強みは、字面だけで雰囲気を出せることだ。中国…

大英帝国の中でハイランダーはどう生きたか──井野瀬久実恵『大英帝国という経験』

興亡の世界史 大英帝国という経験 (講談社学術文庫) 作者: 井野瀬久美惠 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/12/13 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る これは興亡の世界シリーズの中でも注目されるべき一冊であるように思う。というのは、本書で…

観応の擾乱に災害が及ぼした影響とは?亀田俊和『観応の擾乱 - 室町幕府を二つに裂いた足利尊氏・直義兄弟の戦い』を読んで

観応の擾乱 - 室町幕府を二つに裂いた足利尊氏・直義兄弟の戦い (中公新書) 作者: 亀田俊和 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2017/07/19 メディア: 新書 この商品を含むブログ (10件) を見る あとがきに書いているように、著者の亀田俊和氏は天邪鬼な…

阿部正弘という人物をどう評価するか?半藤一利・出口治明『明治維新とは何だったのか』

明治維新とは何だったのか 世界史から考える 作者: 半藤一利,出口治明 出版社/メーカー: 祥伝社 発売日: 2018/04/29 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 幕末史や昭和史に関する著書を多数発表している半藤一利氏と世界史の著作の多い出口治明氏の…

ヒアリなんて序の口!「痛みの鑑定人」昆虫学者が虫刺されの痛みを科学する『蜂と蟻に刺されてみた―「痛さ」からわかった毒針昆虫のヒミツ』

蜂と蟻に刺されてみた―「痛さ」からわかった毒針昆虫のヒミツ 作者: ジャスティン・O・シュミット,今西康子 出版社/メーカー: 白揚社 発売日: 2018/06/07 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 「○○してみた」もここまでくると命がけだ。「痛みの鑑…

陳舜臣『中国の歴史』は中国史入門としておすすめの本

中国の歴史(一) (講談社文庫) 作者: 陳舜臣 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 1990/10/08 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 11回 この商品を含むブログ (10件) を見る ある国の歴史を知ろうとしたとき、入り口としては概説書と小説があります。 概説書の…

塩野七生『ギリシア人の物語Ⅲ 新しき力』におけるアレクサンドロス大王の評価について

ギリシア人の物語III 新しき力 作者: 塩野七生 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2017/12/15 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る ギリシア人の物語の最終巻となるこの巻では、ペロポネソス戦争が終わり、ペルシアに翻弄されて混迷を深める…

中公文庫『日本の歴史』の面白い巻をおすすめしてみる

古いながらもいまだに多くの人に愛読されている中公文庫『日本の歴史』シリーズ。日本史の入門書として紹介されることも多いし、実際に内容は充実しているのだが、この詳しさが逆にこれから手に取る人をたじろがせる原因になるかもしれない。もっと簡潔な日…