明晰夢工房

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男女関係で自分を飾るのは「不誠実」なのか

今日はこちらを読んだ感想などを。

anond.hatelabo.jp僕自身は戦国無双稲姫とか、シンフォギアの風鳴翼のような堅苦しい感じのキャラが好きなので、「隙がない女は好かれない」なんてありえないんじゃないかと思うのですが、誰もお前の好みなんて聞いてない、しかもそれ二次元の話じゃねえかと言われそうなのでこの話は置いておくとして。

 

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上の増田さんの友人が言っているように、「隙がある女のほうが好かれる」というのはある程度事実であるとは思います。なぜそうなるのかというと、仮に僕が女性誌のコラムニストなら「日本男性は幼稚なくせにプライドばかり高いので、自分より優れていそうな女性の前ではコンプレックスを持ってしまうからです」といったことを書くかもしれませんが、本当のところはわかりません。とにかく一般的傾向として、やはり隙があるというか、ある程度ゆるい雰囲気のある女性の方が好かれるという事実はある。

 

で、本来の性格はそうではないのに、そういう「隙のある」人間を演じるのは不誠実なのではないか、というお話ですね。そのほうがモテるのだとしても、それは結局嘘をついているだけではないのか。そのように葛藤する人は少なくないと思います。

私は恋愛に不誠実な人間かもしれない

男がこういうことを言っているとブコメが「ありのままのお前を受け入れる女がいるわけないだろ、甘えんな」一色になると思うので、しばらく反応の違いを観察したい。

2016/10/09 06:08

b.hatena.ne.jp

ブコメでは少々皮肉交じりにこんなことを書きましたが、これは以前読んだあるエントリを下敷きにした感想です。古いエントリなのですが、以前こう言う文章が話題になったことがあります。

anond.hatelabo.jp

ある男性にアプローチをかけられたものの、その席上で延々と彼は自分の欠点を並べ立てた。本来ならそういう場面では「付き合ったらこんな楽しいことがある」という未来を想像させるべきなのに、こんなネガティブなことばかり言う人はとても無理……という内容です。そんなことを言う奴は「ダメな俺をまるごと受け止めてくれ症候群」に罹患しているのだろう、と。

 

これを読んだ時はそういうことなのかな、と思っていたのですが、上記の増田さんの投稿を読んだあとでは、僕にはまた違った光景が見えてきたのです。本当のところは当人でもないとわからないけど、もしかするとその男性は「付き合う上で自分のネガティブな情報を隠しておくのは不誠実だ」と考えていたのではないか。つまり「ダメな俺を丸ごと受け入れてくれ」ではなく、「ダメな情報は包み隠さず公開するので、その上で付き合うかどうか判断してください」が彼の真意だったのかもしれない。

 

一般論として、確かにこんなことをするのは男女関係における「正解」ではないでしょう。相手には不快だと思われてしまうだろうし。でも、もしこの男性の真意が「ネガティブな情報を包み隠さず伝えた上で判断してもらう」ところにあったのなら、その上で振られているのだからこれは互いにとって良かったのだ、ということになります。事実一年後、この男性よりも魅力的(らしい)相手と結ばれているわけですし。

 

このように、「自分を飾ることは不誠実だ」と考えれば、男女関係ではどうしても不利になってしまいます。と言うか、すべての対人関係において不利になりますね。世に出回っているコミュニケーション術の類は全て「自分を飾る」ための方法論なのだから。真面目な人ほどそこで葛藤してしまうのかもしれない。

 

また創作の話になってしまうのですが、ウェブ小説では受けるジャンルというものはある程度限られています。特にファンタジーでは「異世界」に転生するというテンプレが今でも流行していて、そうした形式をなぞる方が読まれやすいという現状があります。歴史物のような一見無関係のジャンルですら、主人公が戦国時代に転生してくるような話が人気だったりします。それがやりたいことだったらいいのですが、そうでない場合はあくまでやりたいことを貫いてマイナー路線で行くか、テンプレを取り入れて人気作家を目指すのか、という選択を迫られることになります。

男女関係に置き換えれば、モテなくていいからありのままの自分を貫くか、自分を飾ってでも異性ウケのいい方向を目指すのか、という選択です。創作ならどちらを選ぼうが自由なのに、男女関係なら前者を選ぶのはしばしば甘えだ、ありのままのお前を受け入れる奴なんているわけがない、と言われる分だけ厳しいかもしれません。

 

僕自身が今書いている小説はあまりウェブで受けるようなタイプのものではないので、あまり話題にならなくてもそれはそういうものだ、と受け入れてはいます(単に筆力が不足しているだけかもしれませんが)。ただ、書きたいことを好きなように書いているだけでも面白いといってくれる人も時にはいるので、それはそれで悪くないかな、とも思っています。

 

自分を偽らずに書いていてもそれを受け入れてくれる人は、少数ながら存在しているわけです。創作と恋愛を同列に考えるわけには行かないかもしれませんが、創作の場合投稿サイトというある程度自作が多くの人の目に触れる場所が用意されているので、そういう人が見つけやすいという事情はあります。

 

だとすれば、上の増田さんがまだ男女関係においてうまくいっていないのは、単に今まで隙がない女性を受け入れられる男性に出会う機会に恵まれなかったというだけのことなのかもしれません。伊集院光も言っているように、出会いの機会さえ多ければ中には「マニアはいる」。もっとも、隙がない女性が好きな男性はマニアと言えるほどに少ないのか、という疑問はあるのですが。

 

なのでこの場合、自分を変えて一般受けするようなキャラを作るか、自分は変えないまま出会いを増やすかという二拓になると思うのですが、隙のあるキャラを作ることがどうしても納得できないのであれば、そこは変えないほうがいいのかもしれません。なお、自分を飾る方を選んでいる人が不誠実であるとは僕は考えていません。それも当人が納得した上での選択でしょうから。もしこの世界に「不誠実」と言える行為があるとすれば、それは自分自身の気持ちを偽ることではないか、と思っています。