明晰夢工房

読んだ本の備忘録や日頃思ったこと、感じたことなど

日本史のおすすめ本を20冊紹介してみる

手元の概説書や新書、読みやすい専門書などの中から面白く読める日本史のおすすめ本を選んでみました。受験に役立つ内容ではありませんが、面白いだけでなく何かしら得るところのあるものを選んでいます。今後の読書の参考までにご覧ください。

中公文庫 日本の歴史シリーズ

 

日本の歴史 (7) 鎌倉幕府 (中公文庫)

日本の歴史 (7) 鎌倉幕府 (中公文庫)

 

 

現在も読みつがれているスタンダードな日本史の概説書のシリーズ。巻によって異なるものの中公文庫の世界の歴史シリーズ同様、読みやすさには配慮されているうえ内容も詳しく日本史を学ぶ上では大いに役立つものです。特に『鎌倉幕府』や『南北朝の動乱』の巻は名著と呼ばれています。ただし内容には古びたところが見られるのも事実で、中世については『陰謀の日本中世史』などで知識をアップデートするのが有効です。

 

山川詳説日本史研究

  

詳説日本史研究

詳説日本史研究

 

 

これ一冊で教科書の内容からもう一歩踏み込んだ日本の通史をおさえることができます。山川出版社からは詳説世界史研究も発売されていますが、やはりこちらは日本史だけを扱っているので内容が濃い。重要なキーワードは太字で書かれ、絵図も多く挿入されているので「詳しい教科書」という感じの本です。受験用というよりは社会人が忘れている日本史の知識を補うために辞書的に使うほうが向いていると思われますが、コラムの内容には信長の従者弥助や明治維新の死傷者数など案外面白いものも多く、時間のあるときにめくってみると意外な知識が得られたりします。

 

元号 全247総覧

 

元号 全247総覧

元号 全247総覧

 

 

現在、元号というものを使っている国は日本だけです。本書では、奈良時代以降使われたすべての元号についてその由来と改元の事情について解説しています。改元の理由を見ていくことでその時代の特徴や社会情勢も自然とわかるようになっていて、応仁の乱以降は兵乱による改元が多かったり、幕末には外国船来航による改元などもあったりします。それ以外では飢饉や疫病、地震などによる改元が多いですが、それだけ日本が災害大国であるということの証拠です。

 

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魏志倭人伝の謎を解く

 

魏志倭人伝の謎を解く - 三国志から見る邪馬台国 (中公新書)

魏志倭人伝の謎を解く - 三国志から見る邪馬台国 (中公新書)

 

 

三国志について多くの著作のある渡邉義浩さんが魏志倭人伝を読み解くという内容の本。邪馬台国論争は史料が倭人伝くらいしかないので想像の余地が大きく、それが多くのアマチュアがこの分野に参入する理由になっていますが、これを読んでいると魏志倭人伝の読解には古代中国の歴史や政治情勢、儒教などの幅広い知識が要求されることがよくわかります。これに加えて邪馬台国の実像を考えるには考古学の知識も必要なので、とても素人が気軽に参戦できるジャンルではありません。では、東洋史家が倭人伝を読むと、邪馬台国の位置はどこになるのか。それは読んでのお楽しみです。

 

古代国家はいつ成立したか

  

古代国家はいつ成立したか (岩波新書)

古代国家はいつ成立したか (岩波新書)

 

 考古学の知識を使って弥生時代から飛鳥時代までの古代社会の変遷について解説している本。興味深いのは考古学における「都市」の定義で、本書では都市には首都としての政治のセンター機能、および宗教と経済のセンター機能が必要と書かれています。邪馬台国の「首都」と言われることもある纏向遺跡は巨大環濠集落ですが、こうした集落は政治・宗教・経済のセンター機能を持っているため都市の萌芽は見られるものの、住民の大半が農民であるためまだ都市とは呼べないと考察されています。環濠集落に中国の城郭が与えた影響についても書かれていて、古代社会が思っている以上に開かれた社会であったことが想像できます。

 

倭国

 

倭国伝 全訳注 中国正史に描かれた日本 (講談社学術文庫)

倭国伝 全訳注 中国正史に描かれた日本 (講談社学術文庫)

 

 魏志倭人伝にはじまり後漢書や隋書・旧唐書・元史・明史など、中国の正史に書かれた日本の列伝を集めているある意味非常にマニアックな本です。「正史に描かれた日本」と言いつつ実は高句麗新羅百済・靺鞨の伝も載っているので古代史の史料が欲しい方にはお得。日本史よりも東洋史が好きな方が欲しい一冊かもしれません。明史日本伝は戦国時代の日本についての情報も含みますが、明智光秀らしい人物が二人もいたり、秀吉が薩摩の奴隷だと名乗ったことになっているなど、かなり誤りが多いことに驚きます。明の時代でこれなら魏志倭人伝の内容などどれほど信用できるのか心配になってきますが、これも中国人から見た日本像として貴重な史料のひとつです。

 

奥州藤原三代

 

奥州藤原三代―北方の覇者から平泉幕府構想へ (日本史リブレット人)

奥州藤原三代―北方の覇者から平泉幕府構想へ (日本史リブレット人)

 

 

本としては薄いですが内容はとても濃い。 中世日本の北方にほぼ独立政権として存在した平泉政権は中国とも盛んに交易を行っており、また平泉で信仰されていた仏教は遼や北宋・高麗・クメール王国のそれとも共通性のある国際的なものだったと指摘されています。このため平泉政権は当時の琉球王国にも比せられるべき存在だったという見方が示され、京都とは異なる平泉の自立性が強調されています。しかしその存在は鎌倉幕府にとっては許せるものではなく、古代以来の「征夷」の対象となってしまったという記述が、東北という地の背負う歴史の重さを感じさせます。

 

アイヌ学入門

 

アイヌ学入門 (講談社現代新書)

アイヌ学入門 (講談社現代新書)

 

 

「縄文のDNAと伝統を引き継ぐ存在としてのアイヌ」という視点からアイヌについて描いている著者ですが、本書では序章でアイヌ史について簡潔にまとめたあと、アイヌ沈黙交易や呪術、山の神の農耕儀礼古代ローマから伝わった小人伝説など、興味深いトピックが多く取り上げられています。驚くべきは奥州平泉から北海道の厚真へスタッフが派遣されていた可能性が指摘されていることで、中尊寺金色堂にもアイヌの金が使われていたかもしれないとも推測されています。知られている以上にグローバルに活動していたアイヌの実態を知ることができます。

 

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陰謀の日本中世史

 

陰謀の日本中世史 (角川新書)

陰謀の日本中世史 (角川新書)

 

タイトルだけみると陰謀論の本かと思ってしまいますが、これは逆に歴史学会にはびこる陰謀論を『応仁の乱』著者の呉座勇一氏が次々と批判していくという内容。単に陰謀論批判ではなく、この一冊で中世史のあらましを学べるようになっています。本能寺の変をめぐる陰謀論批判にはかなり力が入っているので、信長に興味のある方は面白く読めるはずです。最終章の「なぜ陰謀論は人気があるのか」は人が陰謀論に引っかかる心理について解説していますが、この箇所はメディアリテラシーを高める上でも役立ちます。

 

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軍師・参謀

  

軍師・参謀―戦国時代の演出者たち (中公新書)

軍師・参謀―戦国時代の演出者たち (中公新書)

 

 戦国時代における「軍師」がどのようにして誕生したかを解説した本。意外なことですが、もともとの軍師の仕事は気象予報や出陣の儀式の主催などでした。戦勝祈願などの儀式は戦国大名に必要なものだったため、こうした知識を足利学校で学んだ人物は各地の戦国大名にスカウトされていたのです。しかし、やがて戦争のニーズに応じて『孫子』『呉子』などの兵法書もマスターした軍師たちは戦術のアドバイスも行うようになり、軍事顧問としての役割も果たすようになっていったことが解説されています。この軍事顧問としての役割だけが戦国末期まで継承され、「軍師」はしだいに「参謀」的存在へと変わっていったと説明されますが、黒田官兵衛などはその代表例だと書かれています。軍師の役割を通じて、合理的である半面吉凶や縁起を気にする戦国大名の実態も知ることができます。

 

戦国大名

 

 

新書一冊で戦国大名の行政機構や家臣団、税制、流通政策、国衆との関係までわかってしまうお得な本。主に北条家の統治について解説していますが、これは戦国大名としては北条家の史料がもっとも多く残っているからです。戦国大名の支配は思っているよりも繊細で細かい規定がありますが、これは「給人も百姓も成り立ち候様に」という言葉の通り、戦国大名の存立基盤である村が存続できるよう配慮されていたからで、容赦のない収奪を行えば大名自身の生存が危うくなってしまうからです。最終章では信長と他の戦国大名の支配体制に大きな違いがないことも示され、信長の「革新性」についても疑問を投げかけています。

 

戦国大名武田氏の戦争と内政

 

戦国大名武田氏の戦争と内政 (星海社新書)

戦国大名武田氏の戦争と内政 (星海社新書)

 

 

北条家よりも武田家の支配体制について知りたい方にはこちらの新書があります。甲斐の内乱時代から武田信虎、信玄を経て勝頼の時代の内政と戦争について記すだけでなく、短いながら織田政権時代の武田領国の支配や真田氏の内政についても触れているので、一冊で多くの情報を得ることができます。驚くべきは武田信虎という人物の統治手腕で、甲斐の内乱を集結させただけでなく棟別銭の賦課をはじめ、国衆の勢力を削いで城下に移住させるというある種の「中央集権策」まで実施するなど、相当な豪腕であったことがわかります。信玄の覇業も信虎が戦国大名としての基礎を固めていたからこそ可能だったことなのです。

 

 信長の政略

 

信長の政略: 信長は中世をどこまで破壊したか

信長の政略: 信長は中世をどこまで破壊したか

 

 

信長研究一筋に打ち込んできた谷口克広氏の著書。文章が読みやすく、信長の戦争や外交、内政や宗教政策など、信長についての一通りの知識がこの一冊で得られます。近年の研究では信長には「中世的」な部分も多かったことが指摘されますが、そうした見解も取り入れつつ何度も居城を移転したことや流通政策、長槍部隊を創設したことなど信長の新規性についても解説しています。サブタイトルの「信長は中世をどこまで破壊したか」については、信長は「革命家」ではないとしても「合理的改革者」ではあったというのが著者の結論ですが、このあたりが現在多くの人が納得できる信長像かもしれません。

 

検証長篠合戦

 

検証 長篠合戦 (歴史文化ライブラリー)

検証 長篠合戦 (歴史文化ライブラリー)

 

 

真田丸時代考証担当の一人で戦国の武田氏に詳しい平山優氏の著書。論文集なのに読んでいて面白いという珍しい本で、長篠合戦についての軍事的考察がメインとなっています。武田氏の鉄砲隊の編成も信長軍と特に変わるものではなく、織田軍に比べて特に遅れていたわけではないこと、信長軍が「兵農分離」していた証拠はないことなど、信長の革新性については上記の『信長の政略』よりも否定的です。戦国時代の馬についてよく言われる「戦国の馬はポニー程度の大きさしかない」についても考察が加えられており、戦国の馬は小柄ではあっても馬体は逞しく能力が高かった可能性が指摘されています。「武田の騎馬隊」が実在したかどうかも書かれているので、長篠合戦だけでなく戦国時代の合戦について関心を持つ方に広くおすすめします。

 

無私の日本人

 

無私の日本人 (文春文庫)

無私の日本人 (文春文庫)

 

『殿、利息でござる!』というタイトルで映画化もされた本。これをおすすめする理由は、この本を読むことで江戸時代の村の統治の実態をよく知ることができるからです。これは主人公の穀田屋十三郎が集めた資金を仙台藩に貸し付けて利息を取り、吉岡宿の危機を救うという話ですが、これを実行するためにまず肝煎に話を通し、さらにその上の大肝煎に話を持っていき、さらにその上の代官、郡奉行、出入司という順番でこのプランを認めさせる必要があったことがわかります。建前上は江戸時代の日本を統治していたのは武士ですが、ふだん民の面倒を見ているのはこの肝煎(庄屋)であって、全国に50万人ほどいたこの庄屋こそが江戸時代を下支えしていたと磯田氏は書いています。こうした民衆の底力が宿場町を救ったという事実が『無私の日本人』には記されています。

 

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水戸黄門の食卓

 

水戸光圀は日本で最初にラーメンをつくった人物だった、という説は残念ながら取り消されてしまいましたが、明から招いた儒学者朱舜水が光圀に当時の「ラーメン」の作り方を伝授していたことは本当です。光圀は極めて好奇心旺盛な人物でしたが、本書を読めばその好奇心は食の方面にも存分に発揮されていたことがわかります。うどんを手打ちし、初鰹を好み、饅頭を頬張る光圀の食生活を知ることで、元禄時代の武士の生活にも迫ることができます。当時の武士が実は好んで肉食をしていたことも書かれていて、肉食のタブーが建前でしかなかったこともわかります。

 

徳川がつくった先進国日本

  

徳川がつくった先進国日本 (文春文庫)

徳川がつくった先進国日本 (文春文庫)

 

 

日本はかなり治安の良い部類の国ですが、昔からこうだったわけではありません。むしろ室町期の日本人はかなりの暴れ者の集団でした。そんな日本人がなぜ平和的になっていったのかを、本書では段階的に解説しています。重要なきっかけは島原の乱と宝永地震天明の大飢饉です。災害に注目するところが著者ならではの視点ですが、天明の大飢饉は日本にとり国家的な危機であったため松平定信政権は代官改革を行い、民生に意を用いたため多くの名代官がこの時代に現れました。もともと軍事政権だった幕府が、ようやく民衆のため行政サービスを重視するようになってきたのです。災害が多く米に依存する当時の日本社会を維持するには、農村の復興こそが急務であったことがよくわかります。

 

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幕末史

子供の頃夏休みを新潟で過ごしたという著者は、その体験から「反薩長」に染まったと本書では書かれていますが、実際読んでみると本書の書き方はそれほど反薩長に凝り固まっているわけでもなく、バランスが取れているように思えます。講義調で書かれていて文章は読みやすく、幕末史入門の本として使いやすい内容になっています。龍馬暗殺に関して薩摩が怪しいとする見方など、著者の主観が混じっているところもありますが、幕末の志士たちの人物像が立ち上がってくるような書き方なので頭に入りやすいことは確かです。西郷隆盛は日本の毛沢東であると書かれていますが、この見方には賛否両論あるところでしょう。

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龍馬を超えた男 小松帯刀

  

龍馬を超えた男小松帯刀

龍馬を超えた男小松帯刀

 

著者は『西郷どん』の時代考証を務める原口泉氏。NHKBS『英雄たちの選択』でも小松帯刀を取り上げた回がありましたが、ここでは薩摩にとって小松という人物がいかに重要だったかということが強調されていました。番組中で桐野作人氏が「小松のことを嫌いな人は誰もいない」と言っていたほど人当たりのいい小松でなければ島津久光西郷隆盛の仲介をすることもできないし、長州のために銃を購入し、薩長同盟の成立にも大いに貢献したのも小松帯刀です。「薩摩の小松か、小松の薩摩か」と言われたほどのこの人物を抜きにして、幕末の政局は語れません。

 

司馬遼太郎で学ぶ日本史

 

「司馬?太郎」で学ぶ日本史 (NHK出版新書 517)

「司馬?太郎」で学ぶ日本史 (NHK出版新書 517)

 

 

司馬遼太郎をそのまま史実として読まれては困る、と歴史学者がこぼしているのを最近耳にします。これは確かにそのとおりで、司馬作品はあくまで小説です。しかし、司馬作品がただの娯楽に過ぎないのかというとそれも違っていて、やはり司馬作品には作者の鋭い視点があり、これが歴史を学ぶ上では役立つと磯田氏は言います。ただし司馬作品で歴史を学ぶには「司馬リテラシー」が必要になるため、司馬作品をどう読み解くかを知る必要があります。そのために役立つのが本書です。司馬遼太郎によれば、現在の日本をさかのぼっていくと濃尾平野に誕生した権力体にたどりつくのだそうで、その興亡を描いたのが『国盗り物語』です。本書ではこの戦国作品からスタートして幕末の『花神』、明治の『坂の上の雲』、そして昭和について書いたエッセイ『この国のかたち』に至るまで、それぞれの作品を読み解きながら司馬遼太郎がどう歴史を捉えてきたかを解説しています。すでに司馬作品に親しんでいる方も、これから読もうという方にも役立つ内容です。

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以上、今まで読んできた本の中から20冊紹介してみましたが、近代史以降はあまり詳しくないこともありそちらには手が回りませんでした。今後もし機会があったら、近現代史に絞ったものも紹介してみたいと思っています。なお、世界史のおすすめ本についてはこちらで紹介しています。

 

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