11月からシリーズ中国史が刊行開始です。
— 岩波新書編集部 (@Iwanami_Shinsho) October 15, 2019
第1巻『中華の成立 唐代まで』渡辺信一郎
第2巻『江南の発展 南宋まで』丸橋充拓
第3巻『草原の制覇 大モンゴルまで』古松崇志
第4巻『陸海の交錯 明朝の興亡』檀上寛
第5巻『「中国」の形成 現代への展望』岡本隆司
※時代区分を雑に書いてみました。 pic.twitter.com/UnEEJ21Hkk
シリーズアメリカ合衆国史が刊行中の岩波新書だが、こんどは新しくシリーズ中国史の刊行が決まった。
上記のツイートを見るかぎり、時代区分に独自の色があるようだ。
1巻の『中華の成立 唐代まで』は1冊で古代から唐までとかなり長いスパンを扱っている。1冊でここまで広い範囲の概説が書けるのが少々気になるが、なにか独自の工夫があるのだろうか。
(追記)『中華の成立』の書評はこちら。
2巻『江南の発展 南宋まで』は江南と海域を後漢の時代から元代まで扱うようだが、これも扱う範囲が広い。この手の概説書で江南だけにスポットを当てるものは初めてのような気がするが、地域が地域だけに経済史がメインの内容になるのではと予想している。
(追記)『江南の発展』の書評はこちら。
3巻の『草原の制覇 大モンゴルまで』が個人的に一番読みたい巻。こちらは北アジアの遊牧政権を中心に扱うようだ。『興亡の世界史』でも遊牧騎馬民族を扱った巻が3巻もあったが、これも中華中心史観を抜け出そうとする試みのひとつだろうか。著者の古松崇志氏は金や女真についての著書もあるので北東アジア方面についての記述も期待できそうだ。
(追記)『草原の制覇 大モンゴルまで』の書評はこちら。
注目すべきは4巻だ。中国史の概説シリーズで明代だけを扱うものは珍しい。この手のものはたいてい明・清を一緒にするか、元と明をまとめるかのどちらかだが、他の巻がかなり長いスパンを扱っているのにこの巻だけがひとつの王朝について書くのはなぜだろうか。読んだらその理由がわかるものと期待したい。
(追記)『陸海の交錯 明朝の興亡』の書評はこちら。
いまのところ明についてもっとも充実した内容の本はこれだと思うが、これを上回る内容になることを望む。
(追記)シリーズ最後になる『「中国」の形成』は清朝と近現代史についての内容になるが、清朝についての記述が多く近現代史については軽め。近現代史は別にシリーズがあるからだろう。清朝については政治史を一通り追いつつ、社会史の記述も充実している。とくに中国の経済体質について詳しく、イギリスのように資本を集中させることができなかったため18世紀後半に産業革命が起きなかったことがわかる。清朝史の概説としては間違いなくおすすめできる一冊。