明晰夢工房

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麒麟がくる1話『光秀、西へ』感想

  

この光秀は旅の途上、荒廃した室町後期の世界をつぶさに見ている。

野盗が出没し、人身売買が横行し、京には流民があふれかえっている。

比叡山では僧兵が関所を作り、銭を持たない旅人に暴行を働いている。1話から比叡山焼き討ちフラグを立てていく脚本はなかなか挑戦的だ。この光秀、あとで積極的に比叡山を焼くのではないか。

この世界のどこにも、秩序らしいものはない。だから誰かが麒麟を連れてくる者にならなければいけない、ということが、説得力をもって描かれていた。

 

脇役では、やはり松永久秀が強烈な印象を残している。光秀に酒を飲ませて美濃の情勢を聞き出し、鉄砲を売って借りをつくる久秀はしたたかだが、どこか憎めない。この男がどんな最期を迎えるのか、今から気になってくる。

光秀はまだ若いから道三は損得だけで動く男だといっているが、妻の病気を治せる名医が京にいるかもしれないという光秀の言葉を聞き入れたのだから、道三には情もある。この道三はいずれドラマから退場するのが惜しいキャラになる気がする。

 

京では燃え盛る炎の中から梅を救出した光秀だったが、同じように駒を助け出したのは誰だったか。光秀の父だろうか。光秀と炎の取り合わせは本能寺の変を思わせる演出だ。本能寺の変の回は1話とオーバーラップする光景も見られるかもしれない。

 

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あと印象に残った点といえば、「国衆」という言葉が何度も出てきた点だろうか。久秀と光秀が「道三は美濃の国衆を従えている」「美濃の国衆が皆御屋形様に従っているわけではない」という会話を交わしているが、この言葉が大河ドラマで定着したのは『真田丸』以来だ。

 

全国国衆ガイド 戦国の‘‘地元の殿様’’たち (星海社新書)

全国国衆ガイド 戦国の‘‘地元の殿様’’たち (星海社新書)

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/08/26
  • メディア: 新書
 

 

『全国国衆ガイド』では、安藤守就稲葉一鉄氏家卜全の美濃三人衆および竹中半兵衛を出した竹中氏は国衆扱いになっている。これらの人物が斎藤氏を離れるのも、国衆らしい利害を重んじた行動ということになるだろうか。