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【感想】『ヴァイキング』シーズン2(1話)でさらにヴァイキングの略奪の理由付けが明確になった

 

 

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ドラマ『ヴァイキング』はシーズン1のドラマ終盤に入るとラグナルの兄、ロロの存在がクローズアップされてくる。ロロはヴァイキングの英雄として名声を勝ち得る弟に対し、いまひとつ冴えない己の現状に忸怩たる思いを抱いている。そこをスウェーデン王ホリックと敵対するボルグにつけ込まれ、ホリックに忠誠を誓う兄と戦うことになってしまう。

 

ロロは戦場の勇士ではあり、ラグナル軍相手に鬼神のような戦いぶりを見せるものの、ラグナルを前にするととたんに戦意を喪失してしまう。ロロは戦士としてはラグナルより強いかもしれないが、人間としての器が違いすぎるのだ。戦いが終わった後、あまり感情的にならないラグナルが珍しく怒りをみせる。彼は「なぜ仲間同士で争わなければならない!西の土地を手に入れればこんなことをしなくてすむのに」と叫ぶ。ロロが弟の器量に嫉妬し、自分のためだけに戦っているのに対し、ラグナルはいつもヴァイキング全体の利益を考えている。このように、弟が明らかに兄よりすぐれていることが、ロロの嫉妬の原因だ。バラーラデーヴァとバーフバリ兄弟の運命を見る思いだ。先のことはわからないが、この兄弟は遠くない未来、ふたたび対決する時がくるような気もする。

 

それはそうと、ボルグとの戦いの後にラグナルの語ったことは重要だ。ヴァイキング同士の戦いは土地の不足から起きるこだ、と彼は認識している。実際、この戦いはホリック王とボルグとの土地争いが原因で起きたものだ。二度とこんな争いを起こさないためにも、新しい土地が必要だとラグナルは言っている。ついさっきまで兄弟同士で戦う悲劇が起きていただけに、よけいにラグナルの言葉には説得力がある。ロロがボルグ側についたのはロロ自身の問題であって、ヴァイキングの事情は関係ないのだが、この場ではラグナルはロロ自身の罪を問わなかった。

 

ラグナルは身内であるロロを直接裁くことができないので、「立法者」に金を握らせてロロを無罪とする。ラグナルはすでに首長なので、ロロを自分で無罪にもできただろうが、その場合、情けをかけられたロロの誇りが傷つく。だからこうするしかなかった。ロロは「お前の影でいたくなかった。だが影を抜け出したら光はなかった」とラグナルに語る。しばらくロロは日陰者として生きていくしかないのだろう。

 

ラグナルにはロロを許す寛大さがあるが、その副作用なのか、自分自身にも甘いところはある。アスラウグと浮気しておいて子供ができたから二人目の妻にすると言い出し、ショックを受けたラゲルサが家を出ていってしまう。裏切り者のロロやキリスト教徒のアセルスタンを受け入れるラグナルのおおらかさは、ここでは裏目に出た。もっとも、ラグナルがアスラウグを妻に迎えたのは政治的判断でもあるだろう。まだ若く、これから子をたくさん産めそうなアスラウグが妻なら何かと都合はいい。ただ、ラゲルサやビョルンとアスラウグの折り合いを考えなかったのはいただけない。

 

シーズン1ではアセルスタン視点やラゲルサ視点があったことでヴァイキングの価値観に視聴者がなじみやすくなっていたが、シーズン2に入り、「仲間同士の争いをなくすため」という大義名分ができて視聴者がよりヴァイキング側に感情移入しやすくなったように思う。今後は略奪行も大規模になっていくだろうし、イングランドのエグバート王も手強そうなので戦記としての色合いが濃くなっていくのだろうか。