明晰夢工房

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カクヨムの新連載小説「ムルムクス」が怖すぎて続きが気になりすぎる件

読みだしたら止まらない小説というものがある。

いつも歴史とファンタジー小説しか読まない自分が、まさかホラーにここまではまるとは思わなかった。

これは一度読んだが最後、続きが気になり、次回の更新を渇望してしまうようになるだろう。文字通り巻を措く能わず、という感覚を味わえる、これはそんな作品だ。

kakuyomu.jp

世の中、「怖い話」というのはいくらでもある。

殺人鬼が暴れまわったり、大災害が起きるパニック映画ももちろん「怖い話」だ。

しかし、フィクションとして求められる「怖い話」とはどういうものだろうか。

単にこちらに脅威を与える、という存在が出てくるだけでは物足りない。

やはり「得体が知れない」ということが、上質なホラーには欲しい要素なのではないかと思う。

 

普通に生きていても体験できないことを体験できる、それがフィクションならではの強みだ。

そして、そのフィクションの強みを存分に活かしたホラーがこれから紹介するカクヨムで連載中の作品「ムルムクス」だ。

どんな雰囲気の作品なのかは、多くの言葉を費やすよりもこの動画のほうがよく雰囲気を伝えてくれてる。

 

この世界では、ある女生徒の突然の心停止に始まり、次々に登場人物が理不尽に死んでいく。

その死に方には法則性があるようにも感じられるし、登場人物もそう考えてなんとか対処しようとするのだが、その努力をあざ笑うかのようにあっさりと死ぬ人物も出てくる。

その死が超自然的要因によるものなのか、殺人なのか、あるいは他の原因があるのか、それすらもわからないという恐怖が、じわりじわりと日常を侵食していき、盤石だった世界にひびが入っていく。

 

ある人物の死に様などは本当にひどいもので、これ以上酷い死に様というのは数多のミステリやホラーの中にもなかなか出てこないのではないかと思う。

その酷さ自体も衝撃的なのだが、果たして何者がどういう動機でこんな真似をするのか、という不気味さ、得体の知れなさが、一連の事件への恐怖をより増大させ、読者の心をつかんで離さないのだ。

 

一番ひどい死に方をした人物の特徴からして、この世界には「例外」が存在しないらしいことも明らかだ。主役級に見えたからといって生き残れるとは限らない。

どんなキャラでも理不尽に死ぬかもしれないし、その死がどんな理由で起こっているのかも、見当もつかない。

 

この状況の中で、年端もいかない少年少女がいつまで正気を保ち得るのか?

現時点ではまだわからないが、この先とてつもないカタストロフが待ち受けているかもしれない。

そんなことを考えてしまうほど、このムルムクスの世界は不気味な不条理さに満ちている。

考えすぎかもしれないが、この作品での一連の「死」とは、我々が住む世界そのものの一つの象徴であるかもしれない。

人生とは理不尽だし、善人が何も報われないまま酷い目にあったり、逆に悪人が富み栄えることもある。

そうかと思えば、善人が善人であるがゆえに幸福をつかむこともよくある話だ。

何事も確実にこうと決まらない、これという法則性が何もない、そんな不条理の中に我々は投げ出されている。法則性があるようなないようなこの作品の連続死もまた、そうしたこの世の不条理さの一つの現われであるように思えるのだ。

少なくともそう思わせるだけの不思議な深みが、この作品には感じられる。

 

saavedra.hatenablog.com

ムルムクスの作者はこちらで紹介した『6番線に春は来る。そして今日、君はいなくなる』の大澤めぐみ。

こちらを読んだ方なら、がらりと作風を変えてきた著者の変貌ぶりに驚くだろし、『おにぎりスタッバー』からの読者なら、まだこの作者はこんな手札を隠し持っていたのか、と新鮮に思うかもしれない。

もちろん、作者のことを何も知らない読者でも十分に楽しめる。ホラーに適性がない人を除けば、およそどんな人でも惹き込まれる吸引力を持った作品になっていると思う。

ウェブでは異世界系の作品が目立つが、こういうものも無料で公開されているのだということをぜひ多くの方に知ってほしい。

 

…… というわけで、ここからは私からの提案、なのですが。

もしこの作品を読んで、面白いと感じたなら、できればカクヨムのアカウントを取得してこの作品に☆を入れたり、それぞれの話に応援の♡を入れるなどのアクションをしてみてはいかがでしょうか?

そんなのめんどくさい、という気持ちはよくわかります。

ですが、これは好きな作品や作者をダイレクトに応援することのできる、またとないチャンスでもあるのです。

カクヨムのアカウントを取得しないまま、小説を読んでもPVが増えるだけですが、☆が増えればそれだけ作品の評価に直結します。

読んで面白いと思っても、読むだけだとその気持ちが作品の評価に何ら反映されませんし、それはとてももったいないことだと思います。

それに、カクヨムに登録してこの作品をフォローすれば更新された時に自分のアカウントやメールアドレスに通知が来ますし、続きを追うのが容易になるというメリットもあります。

 

なにより、読者に評価してもらえるというのは作者にとり、最高のモチベーションになるのです。

私もカクヨムで書いている立場だからわかるのですが、書けばすぐに反応がもらえるというのがウェブ小説の強みです。

応援されればされるほど書く気力が湧いてきますし、それだけ良い作品を書くこともできるというものです。

読者の一票によって良い作品が増える可能性が高まる、という好循環が生まれれば、それだけ良いものが世の中に出回りやすくなります。

これを読んだ方が、一人でもそのような循環の中に加わっていただけるなら幸いと思います。