明晰夢工房

読んだ本の備忘録や日頃思ったこと、感じたことなどなど

ヤグノブ人とソグドに関するメモ

BSプレミアムシルクロード謎の民 大渓谷に生きる」でヤグノブ人のドキュメンタリーを放映していた。主に伝統的な牧畜を生業としているヤグノブ人だが、ヤグノブの言葉にはソグドごと共通する単語が300以上あるのだという。結婚式のときに新郎新婦が火の周りを回る儀式や、琵琶のような楽器にもソグドの伝統が残っているらしい。

 

自家発電以外には電気も使わず、牧畜と農耕で生活しているヤブノグ人の暮らしは素朴なものだ。村の中では貨幣も流通しておらず、足りないものは物々交換する。番組中では羊の肉と塩を交換しているところを写していた。塩は岩塩で、羊にも週3回くらい舐めさせているらしい。

農耕は寒冷地でも育つ豆とジャガイモを栽培している。番組中では雨が少なかったため豆があまりとれず、羊を売らなければいけなくなっていた。ヤグノブ渓谷からタジクの首都ドゥシャンベまでは80キロ程度もあり、険しい山間を縫って家畜を連れて行かなければならない。タジク商人に家畜を売って手に入れたお金は砂糖や油やお菓子など、家族が一冬過ごす食料に変わる。

 

ヤグノブ人がこの渓谷に住むようになったのはアラブ人の侵攻から逃れるためだったようだが、戦乱を逃れるため秘境で生きることになった事情については同じくBSプレミアムで放映していた「秘境中国 謎の民 天頂に生きる」のイ族とも共通している。伝統的な共同体で助け合いながら生活していること、若者は都会に出て行き違う文化と価値観を身につけることなどもよく似ている。ヤグノブ人の父親は息子に弟の負担を減らすため羊の数を減らして欲しい、といわれていた。子供が都会に出て働き手が減ると一人当たりの放牧の負担が大きくなるので、牧畜のやり方も変えなくてはいけなくなる。ドゥシャンベの学校に通うヤグノブの若者はタジク語を勉強し、都会で職を得ることを望んでいるが、ヤグノブに残りたい若者はどれくらいいるのだろうか。そのあたりまでは番組を見ただけではわからなかった。