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映画『第九軍団のワシ』感想:ローマ軍人とブリガンテス族の少年の友情を描いた良作

 

第九軍団のワシ スペシャル・エディション [DVD]

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最近の作品に比べれば地味な映画だが、とても良かった。

サトクリフの原作とはストーリーが少し違うようだが、未読の私にはどこが違うのかわからない。

いずれにせよ、古代ローマに多少なりとも関心のある人なら楽しめる作品ではないかと思う。

 

主人公はローマの軍人マーカス。軍の象徴であるワシの紋章を奪われた父の恥を雪ぐため、属州ブリタニアへ赴いたマーカスはブリガンテス族相手に戦功をあげるものの、足を負傷して除隊となってしまう。

傷心のマーカスは剣闘士の試合で殺されそうになっていた少年を助けるが、少年はローマに恨みを持つブリガンテス族の出身だった。しかし命を助けられた恩から、少年エスカはマーカスへの忠誠を誓い、ワシを取り戻すマーカスの旅の供を買って出ることになる。

 

映画に出てくるハドリアヌスの城壁は思ったよりも立派だ。同時代の万里の長城よりよほど立派なのではないだろうか。「ここが世界の果てだ」というローマ兵の言葉通り、長城の北に広がっている世界は未開そのもので、自然の描写も美しい。アザラシ族という肌を灰色に塗っている部族が出てくるところなどは若干ファンタジー色も感じるが、ほんとうにこういう部族が存在したのだろうか。

マーカスとエスカの敵味方を超えた友情が軸となるストーリーはごくシンプルなものだが、元が児童文学の名作であるだけに今なお古びないすがすがしさを感じさせる。大規模な戦闘シーンは冒頭とラストくらいしかないが、つねに陣形を組むローマ兵と見境なく突っ込んでくるケルト人の戦い方の違いも楽しめる。いずれ原作もじっくり読んでみたいと感じさせる作品だった。