明晰夢工房

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ヴァイキングは人間を生贄に捧げていたか

ドラマ『ヴァイキング』ではウプサラで人が神の犠牲に捧げられるシーンがある。アセルスタンもシーズン1ではここで殺されかけていたが、まだキリスト教を信じていることを見抜かれて犠牲になる資格がないということになり、助かった。

 

シーズン2ではアセルスタンはマーシア王女クウェンスリスの問いに答え、北の民は9年に一度ウプサラで人を犠牲に捧げると答えている。このような風習が、ヴァイキングの社会に実際にあったのだろうか。『ヴァイキングの暮らしと社会』の宗教について書いている箇所を読んでみる。

 

ヴァイキングの暮らしと文化

ヴァイキングの暮らしと文化

 

このようなヴァイキングの宗教の核をなしたのは何であろうか。その答えは簡単だ。儀礼宗教(カルト)、ギブ・アンド・テイクの原則にたつ実利を意図した行為、すぐに実行できる宗教的ならわしである。この宗教が最高潮に達するのは「ブロート」とよばれる供儀の祭礼であり、それには公的なものも私的なものもある。かなり古い時代のスカンディナヴィア人はたしかに人間を供儀に捧げていた。けれども、それは西暦紀元直後、つまりこの北方の地では鉄器時代と呼ばれていることのことである。ヴァイキング時代になると、そのような風習はどうやら残っていなかったらしい。そのかわり、動物の供儀は頻繁におこなわれていたと思われる。

 

人間を生贄に捧げるのは、ヴァイキングキリスト教徒との違いを際立たせるための演出のようだ。ヴァイキングは自分の守護神を「親愛なる友(ケーリ・ヴィンル)と呼び、その神をかたどった護符を財布に入れるほど信仰心は強かったが、その信仰心を自分自身を神に捧げるという形では表さなかったらしい。