明晰夢工房

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瓜生中『よくわかる浄土真宗』(kindle unlimited探訪1冊目)

 

 

kindle unlimitedが2ヶ月で299円のキャンペーン中だったので昨日から入ってみた。仏教の入門書はかなりたくさん読めるので、まず読み放題の期限が切れそうな『よくわかる浄土真宗』から読んでいくことにする。

 

この本によると、大乗仏教とは仏教の大衆化運動であり、悟りにいたるさまざまな道を模索するものだった。阿弥陀如来も悟りへの導き手として考え出された如来のひとつで、サンスクリット語ではアミターバ(=計り知れない光明を発し続ける)になる。漢語では無量光仏と訳される。

 

阿弥陀如来はメシア思想と関連が深いと解説されている。キリスト教的なメシア思想が東方に伝わり、これがインドで大乗仏教と融合して生まれたのが阿弥陀如来と考えられているらしい。浄土真宗で極楽が「西方」にあるとされているのは、メシア思想とともに天国が西から伝えられたからだという。

 

ただし、キリスト教の天国と浄土真宗でいう極楽浄土はかなり異なる。キリスト教の天国では男女が酒を酌み交わし饗宴を楽しむが、極楽浄土には女性がいない。これは、男女間の愛欲、つまり煩悩を起こさせないためだ。阿弥陀如来に煩悩の起こらない西方浄土に連れて行ってもらえれば、何もしなくても煩悩がなくなっていくからいずれは悟りに到達することになる。極楽浄土は快楽の尽きた清らかな世界なのだ。

 

他力本願が浄土真宗の基本だが、もともと「自灯明(=自らをよりどころにして生きる)」をかかげてきた仏教から、なぜ他力を頼む教えが出てきたのだろうか。この本では、末法の世では戒律を守り、厳しい修行をするのは不可能だと考えられたから」と解説されている。

浄土真宗七高僧のひとりに数えられる道綽は、釈迦の教えを「聖道門」と「浄土門」の二つに分けている。聖道門は自力で修業し悟りにいたるもので、浄土門は念仏を唱えて極楽に往生するものだ。末法の世では人間の資質が低下し、聖道門を歩める者がいないため、出家在家を問わず、人は浄土門に頼るしかないと道綽は説いた。

 

この道綽と同じ教えを、親鸞法然から受けついでいる。法然ははじめて親鸞に会ったとき、まず親鸞の仏教についての考えを語らせた。親鸞比叡山で学んだ天台の教義などをくわしく述べたが、それは自力聖道門の教えであり、末法の世では他力浄土門の教えでなければ救われないと法然は説いた。親鸞法然の教えを即座に理解し、その場で弟子になったのだという。

 

親鸞が妻帯していたことはよく知られているが、この本によれば法然親鸞の妻帯に賛成していたという。そうであってこそ、世俗に生きる在家の信者も極楽に往生できると説けるからだ。

 

法然は在家の人々に向かって教えを説いたが、剃髪して妻帯していない出家者が肉食妻帯する在家の人々も平等に極楽浄土に往生できると説いても説得力がない。

肉食妻帯する在家のものには、親鸞が「女犯」に悩んだように破戒の負い目がある。出家の僧侶がいくら阿弥陀如来は出家、在家の別なく極楽往生を約束してくれていると説いても、超俗の出家者は救われるだろうが、肉食妻帯している在家のものがはたして救われるのだろうか、という疑問を持つ者も出てくる。そんな疑問を払拭するためには、自らが妻帯して在家と同じ立場で念仏を勧めるよりほかに手立てはない。

 

阿弥陀仏にすがって往生をめざす浄土真宗は、もともとの仏教よりもこちらのイメージする「宗教」に近い印象がある。多くの人はどこかで大いなる何かに救ってほしいという心性があり、その需要に浄土真宗はこたえていたのではないだろうか。

 

 

著者には仏教関連の多くの著書があるが、kindle unlimitedで読み放題になっている本はその時期によって違うので、入会を迷っているなら読み放題対象の本を確認してから決めたらいいかもしれない。