明晰夢工房

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kindle unlimitedを2ヶ月使ってみた感想とおすすめ本

kindle unlimitedを去年の11月9日から使いはじめて2ヶ月になろうとしている。2ヶ月299円の価格につられて試してみたサービスだが、100分de名著シリーズや光文社新訳の古典がたくさん読めること、新書もけっこう幅広く読めることなどが魅力で、最初の1ヶ月くらいはこれらの本を読みあさっていた。

 

saavedra.hatenablog.com

結果として、それまで何となく読んでしまっていたネット上の議論や揉め事などを見る時間が激減し、かなりストレスを減らすことができた。ある意味デジタルデトックスにもなっていたわけで、時間を有意義に使う、という意味でも役に立つサービスではないかと思う。

 

ただし、1か月を過ぎるころから徐々に飽きてきた。読める新書に新しいものはあまりないし、古典はじっくり時間をかけて紙の本で読みたいのでkindleで読む気があまりしない(これは人によるだろうと思う)。100分de名著シリーズのような入門書的な本がたくさん読めるのはいいが、私は興味の幅がそれほど広くなく、仏教やギリシャ哲学関連の本数冊を読んだら満足してしまった。

 

 

漫画で読める名著がたくさんあるのはいい。中でも『ソクラテスの弁明』はほぼ原作とおりなうえ、『パイドン』の一部も入っているのでお得。まんがで読破シリーズでは『神曲』『死に至る病』『エミール』などを読んだ。漫画ではほんのさわりくらいしかわからないかもしれないが、それでも入門書としては役立つ。『死に至る病』は思想部分にはあまり惹かれなかったが、キェルケゴールの苦悩に満ちた人生そのものが物語として成り立っていた。

 

 

kindle unlimitedは結局サブスクなので、各分野の入門書的な本をつまみ食い的にたくさん読むのに一番向いているのだと思う。逆に専門書的な者はあまり読めないので、なにかを深く知りたい人には向かない。といっても例外はあり、このサービスでは『新アジア仏教史』を全巻読むことができる。仏教史について知りたい方はこれを読むためだけに使ってみてもいいかもしれない。

 

 

歴史好きな人にとっては、『信長公記』『神皇正統記』などの現代語訳が読めるメリットもある。歴史系の古典では『雑兵物語』が抜群に面白く、弓兵も槍兵も鉄砲足軽も、騎馬武者と戦うならまず馬を狙えと書かれている。「将を射んと欲するなら……」はやはり正しかったのだろうか。唐辛子を身体に塗れば暖まるが、その指で目を触るなといった生活の知恵まで書いているのが楽しい。

 

 

マンガや自己啓発書はあまり読まないので、これらが読みたい人とってのkindle unlimitedの価値はよくわからない。ただ、著者に興味があったため読んだ『地平線を追いかけて満員電車を降りてみた』はいい本だった。その願望は本当の願望なのか、をひたすら内観していくこの内容は、ある意味アンチ自己啓発ともいえるかもしれない。個人的には紀里谷和明氏がこのような本を書いていることが驚きだった。

 

これまで紹介した本以外にも、kindle unlimitedで読めてよかった本は少なくない。以下、そのうちの数冊を紹介する。

 

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いつもの永田カビ、といわれればそれまでだが、理解あるパートナーが現れなくても幸せにはなれるらしい……というわけで、その種の展開が苦手な人にも安心して読める内容。

 

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悪人正機説は何も突飛なことを言っているわけではないことがよくわかる一冊。そもそも「善人」「悪人」の定義が我々の考えるそれとは全然違っていたのだ。親鸞があくまで仏教における「悪人」(=煩悩まみれで自力で悟りを開けない人)に寄り添っていたことがよくわかる内容だった。

 

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やはり読むべき古典はある、と思い知らされた一冊。ストーリー自体はよく知られたものであっても、格調高い文章に触れる意味はある。古代ギリシャの息吹は原典に近いものでなければ感じにくい。

 

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これ以上ないくらいわかりやすい初期仏教の入門書。なぜ仏教では悟りを開いて輪廻からの解脱をめざすのか、古代インド人の思想を紐解きつつていねいに解説してくれている。これを読んで初めて「諸法無我」の意味が理解できた。

 

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なぜカルトから抜け出すのが難しいのか、がよくわかる漫画。カルトには独特の「承認の場」があり、自分が特別にな人間になったかのような感覚に浸れる。この味を覚えたら容易には外の世界に出られない。幸運も手伝ってようやく世間に戻れた著者の戸惑いや恐怖もよく描かれていて、自由であることの困難さを思い知らされる。

 

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江戸初期のキリシタンたちがいかに弾圧に抗し、信仰を貫いたかを記した本。捕まれば火刑になるとわかっているのにみずから名乗り出て、殉教したがる日本人の信仰心の強さにはただただ驚かされる。信仰を捨てた武士を臆病者と罵ったという、家康の意外なエピソードも知ることができる。

 

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古今東西の有名人の臨終のようすを年齢別に並べている本。歴史上の人物については淡々とした記述になっていることも多いが、近代以降の人物については詳しく書かれている。どんな死に方に同情できるかで自分の価値観が浮かび上がってくる一冊。

 

kindle unlimitedは30日間無料体験できるので、無料期間中にこれらの本以外にも面白そうな本は探せるのではないかと思う。30日では読みきれないほどよさそうな本がたくさんあったら継続すればいいのではないだろうか。