小説には文字しか存在しない。
だからこそ、文章の有難味というものが小説には欲しい。
その点、この『おにぎりスタッバー』は文章がぎっしり詰まっていて、小説を読む醍醐味を存分に味わえる。
ページを開くなり、怒涛のような文章の洪水が襲いかかってくる。
この小説は「援助交際をしている」と噂を立てられている主人公・アズの一人語りによって展開される。
この語りがとにかく饒舌で小気味良い。
スクールカーストのような現実的な話題から魔法少女、エクスカリバー、言葉を話す犬などまで登場する混沌とした世界観も、この文章の奔流に身を浸しているうちに自然と受け入れられてしまう。
目まぐるしく展開する極彩色の青春絵巻に、いつの間にか虜にされてしまうのだ。
このような小説をどのように形容すればいいのだろうか。
この言葉の満漢全席を前にしては、およそどのような慣用句も陳腐なものと化してしまう気がする。
これは考えるのではなく、感じる小説だ。
読者はただアズの語りに乗せられて、そのまま最後のページまでたどり着けばいい。
ラストの一言に、読者は脳天をぶちのめされ、軽く目眩を覚えるだろう。
読者の心に確かな爪痕を残す傑作が、ここに誕生した。