明晰夢工房

読んだ本の備忘録や日頃思ったこと、感じたことなどなど

世界史

【書評】秦の軍事制度から古代中国の性差まで多彩な論文を収録した『岩波講座世界歴史05 中華世界の盛衰』

中華世界の盛衰 4世紀 岩波書店 Amazon 今年10月から岩波講座世界歴史新シリーズの刊行がはじまった。刊行二冊目になる『中華世界の盛衰 4世紀』では、殷から西晋末にいたるまでの中華世界およびその周辺世界を扱っている。通史を扱っているのは『「中華帝国…

【感想】自己皇帝感あふれるビザンツ皇女アンナ・コムネナが主人公のフルカラー4コマ『アンナ・コムネナ』

アンナ・コムネナ(1) (星海社コミックス) 作者:佐藤二葉 講談社 Amazon 開幕一秒で弟に「お前を消せばいいわけね」と言い放つヒロインもめずらしい。本作の主人公アンナ・コムネナは父アレクシオスが皇帝なので、自分もビザンツ皇帝をめざしていたが、弟…

【書評】阿部拓児『アケメネス朝ペルシア 史上初の世界帝国』

アケメネス朝ペルシア- 史上初の世界帝国 (中公新書, 2661) 作者:阿部 拓児 中央公論新社 Amazon 読みやすくわかりやすいアケメネス朝史の概説。キュロスの建国からアレクサンドロスの東征による滅亡まで、アケメネス朝ペルシアの220年の興亡を王の列伝形式…

【感想】修道女フィデルマシリーズ長編第一作『死をもちて赦されん』

死をもちて赦されん (創元推理文庫) 作者:ピーター・トレメイン 東京創元社 Amazon 若くて美貌、学識豊かで弁護士資格を持ち頭脳明晰……と超ハイスペックな修道女フィデルマが難事件を解決するフィデルマシリーズの第一作。本作『死をもちて赦されん』ではイ…

ゲームさんぽの藤村シシンさんの動画は古代ギリシャ文化入門として圧倒的におすすめ

www.youtube.com ゲームさんぽの動画は面白いものが多いですが、藤村シシンさんはゲームさんぽに出演することを目的にしていただけあって、藤村さんが出ている回は解説の巧みさと気合の入り方が見事です。 一番新しい上の動画ではアサシンクリードオデッセイ…

ソクラテスの妻クサンティッペの「悪妻伝説」はどのように生まれたか

ソクラテス (岩波新書) 作者:田中 美知太郎 発売日: 2019/11/28 メディア: Kindle版 ソクラテスの妻クサンティッペは「悪妻」だったといわれる。彼女はときにソクラテスに水を浴びせかけたり、上着をはぎ取ったりしたという。そんな扱いを受けてもソクラテス…

岩波新書『シリーズアメリカ合衆国氏』『シリーズ中国の歴史』が電子書籍化

岩波書店の電子書籍、12月はすごいことになっています。『孤塁』『ブルシット・ジョブ』といった単行本から、少年文庫70点(!)、そして新書は『シリーズアメリカ合衆国史』『シリーズ中国の歴史』の配信が始まります。https://t.co/1t8HOadMsi pic.twitter…

ヴァイキングは人間を生贄に捧げていたか

ドラマ『ヴァイキング』ではウプサラで人が神の犠牲に捧げられるシーンがある。アセルスタンもシーズン1ではここで殺されかけていたが、まだキリスト教を信じていることを見抜かれて犠牲になる資格がないということになり、助かった。 シーズン2ではアセルス…

【感想】『ヴァイキング』シーズン2(1話)でさらにヴァイキングの略奪の理由付けが明確になった

Vikings: Season 2 [DVD] [Import] メディア: DVD ドラマ『ヴァイキング』はシーズン1のドラマ終盤に入るとラグナルの兄、ロロの存在がクローズアップされてくる。ロロはヴァイキングの英雄として名声を勝ち得る弟に対し、いまひとつ冴えない己の現状に忸怩…

【感想】ドラマ『ヴァイキング』(シーズン1)はヴァイキングの残酷さとの距離の取り方が絶妙な歴史ドラマ

Vikings: Season 1/ [DVD] [Import] アーティスト:Vikings 発売日: 2013/10/15 メディア: DVD このドラマを観る前は、感情移入が難しいのではないかと思っていた。ヴァイキングを主人公に据える以上、どうしても略奪を描かざるをえない。ヴァイキング側から…

【書評】パニコス・パナイー『フィッシュ・アンド・チップスの歴史』

フィッシュ・アンド・チップスの歴史: 英国の食と移民 (創元世界史ライブラリー) 作者:パニコス・パナイー 発売日: 2020/09/17 メディア: 単行本 イギリス料理といえばフィッシュ・アンド・チップスをまず思い浮かべる人は多い。イギリスを代表する国民食で…

なぜ清朝の中国では産業革命が起きなかったのか?岡本隆司『「中国」の形成』

「中国」の形成 現代への展望 (シリーズ 中国の歴史) 作者:岡本 隆司 発売日: 2020/07/18 メディア: 新書 岩波新書のシリーズ中国の歴史の最終巻になるこの本のまえがきでは、アジアと西洋の「大分岐」についてふれている。18世紀の終わりころからイギリスな…

【感想】加藤九祚『シルクロードの古代都市 アムダリヤ遺跡の旅』

シルクロードの古代都市――アムダリヤ遺跡の旅 (岩波新書) 作者:加藤 九祚 発売日: 2013/09/21 メディア: 新書 94歳で亡くなるまで発掘の最前線に立ち続けた加藤九祚氏が、アムダリア遺跡で出土した発掘品についてまとめたもの。一番興味をひかれたのはやはり…

【感想】鈴木董『大人のための「世界史」ゼミ』

大人のための「世界史」ゼミ 作者:鈴木 董 発売日: 2019/09/28 メディア: 単行本(ソフトカバー) この本には「文化」「文明」に独自の定義がある。シュペングラーやトインビー、サミュエル・ハンチントンなどあまたの知識人がこれらの言葉を独自に定義して…

【感想】市川裕『ユダヤ人とユダヤ教』

ユダヤ人とユダヤ教 (岩波新書) 作者:裕, 市川 発売日: 2019/01/23 メディア: 新書 これを読んでいて、ユダヤ史についての知識に穴があることに気づいた。それは中世、とりわけイスラーム世界におけるユダヤ人についてだ。この本では4つの視点からユダヤ人と…

【書評】山本太郎『感染症と文明 共生への道』

感染症と文明――共生への道 (岩波新書) 作者:山本 太郎 発売日: 2011/06/22 メディア: 新書 文明化とは感染症との共存だ、ということがこの本の一章『文明は感染症の「ゆりかご」だった』を読むとわかる。文明化以前の人類は小規模な集団で狩猟生活を行い、移…

『新もういちど読む山川世界史』はコラムの人物伝が面白い

新 もういちど読む 山川世界史 発売日: 2017/08/01 メディア: 単行本(ソフトカバー) 世界史本なら山川出版社は安心のブランドだ。なにしろ教科書をつくっているのだから、この手の「大人の学び直し」的なものの内容も無難で偏りがなく、間違いのないものに…

『岩波講座世界歴史12 遭遇と発見』に見るギリシア人のスキタイ観の変化

岩波講座 世界歴史〈12〉遭遇と発見―異文化への視野 作者:樺山 紘一 発売日: 1999/02/25 メディア: 単行本 この巻では『古代ギリシア人のスキュタイ観』が特におもしろい。遊牧騎馬民族は野蛮で農耕民族は文明的、というステロタイプはすでに克服されつつあ…

【書評】オスマン帝国600年の歴史が新書一冊でわかる『オスマン帝国 繁栄と衰亡の600年史』

オスマン帝国-繁栄と衰亡の600年史 (中公新書) 作者:小笠原 弘幸 発売日: 2018/12/19 メディア: 新書 大変読みごたえのある一冊だった。オスマン帝国600年の歴史の概略を、この一冊で知ることができる。この本ではオスマン帝国歴代スルタン全員の事績を追い…

【感想】『ビジュアルパンデミック・マップ 伝染病の起源・拡大・根絶の歴史』

ビジュアル パンデミック・マップ 伝染病の起源・拡大・根絶の歴史 作者:サンドラ・ヘンペル 発売日: 2020/02/14 メディア: 単行本 ジフテリアや天然痘・コレラ・マラリア・ペスト・梅毒など、人間を苦しめてきた数々の伝染病の歴史を図解で解説している本。…

【書評】出口治明『人類5000年史Ⅲ』

人類5000年史 III (ちくま新書) 作者:治明, 出口 発売日: 2020/03/06 メディア: 新書 人類5000年史のシリーズもこれで3冊目となった。この巻では東洋史では宋からモンゴル帝国のユーラシア制覇、そして明王朝までが語られ、西洋史は中世ヨーロッパ世界の成立…

世界史の流れを商業ネットワークから理解できる『教養のグローバル・ヒストリー』が面白い

教養のグローバル・ヒストリー:大人のための世界史入門 作者:北村 厚 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房 発売日: 2018/05/11 メディア: 単行本 グローバルヒストリーに基づく世界史入門として最適 1冊だけで「世界史の流れ」をおさえられる本はないものか、と…

山川出版社 歴史の転換期1『B.C.220 帝国と世界史の誕生』に見るローマ帝国のブリテン島支配の実態

B.C.220年 帝国と世界史の誕生 (歴史の転換期) 作者:藤井 崇,宮嵜 麻子,宮宅 潔 出版社/メーカー: 山川出版社 発売日: 2018/04/28 メディア: 単行本 2018年以降、山川出版社から順次刊行されている歴史の転換期シリーズの1巻。最初の巻となる『B.C.220 帝国…

【感想】テンプル騎士団を知りたいならまずはこの本。佐藤賢一『テンプル騎士団』

テンプル騎士団 (集英社新書) 作者:佐藤 賢一 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2018/07/13 メディア: 新書 アサシンクリードでは悪役側で、とかく怪しげなイメージを持たれがちなテンプル騎士団だが、その実態はどんなものだったか?それを知りたいなら、ま…

【書評】『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365 レビュー 人物編』の「悪人」の項目には誰が入っているのか?

1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365 人物編 作者: デイヴィッド・S・キダー,ノア・D・オッペンハイム,パリジェン聖絵 出版社/メーカー: 文響社 発売日: 2019/04/12 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る このシリーズ、ど…

【感想】三崎律日『奇書の世界史』に書かれたダーガーの意外な実像

奇書の世界史 歴史を動かす“ヤバい書物”の物語 作者: 三崎律日 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2019/08/23 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る かつてと学会は、「著者の意図とは別の視点から笑える本」をトンデモ本と定義していた。本書で紹…

【感想】貴堂嘉之『南北戦争の時代 19世紀(シリーズアメリカ合衆国史2)』

南北戦争の時代 19世紀 (岩波新書) 作者: 貴堂嘉之 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2019/07/20 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 岩波新書のシリーズアメリカ合衆国史の2冊目。わかりやすく読みやすい。第1章では西漸運動の展開について書かれ…

【感想】『世界をおどらせた地図 欲望と蛮勇が生んだ冒険の物語』は探検家列伝として読める本

世界をおどらせた地図 作者: エドワード・ブルック=ヒッチング,ナショナルジオグラフィック,関谷冬華 出版社/メーカー: 日経ナショナルジオグラフィック社 発売日: 2019/09/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る ナショナルジオグラフィック社の…

【感想】『世にも危険な医療の世界史』の衝撃的すぎる内容を紹介する

世にも危険な医療の世界史 作者: リディアケイン,ネイトピーダーセン,福井久美子 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2019/04/18 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 健康法の歴史は古い。今でも健康オタクはたくさんいるが、科学の未発達な時代の…

【書評】出口治明『人類5000年史Ⅱ』

人類5000年史II (ちくま新書) 作者: 出口治明 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2018/12/06 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 出口治明氏による世界史通史の2冊目は期限元年~1000年ころまでを扱っています。内容としては1冊目同様年代ごとに各…