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大河ドラマには出せない黒田官兵衛のブラックな所業を描く小説。葉室麟『風渡る』

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黒田官兵衛と言えば、信長の将来性をいち早く見抜き、主君の小寺政職に毛利ではなく織田に付くように進言した人、というイメージがあるのですが、どうもこうした人間像は小説や大河ドラマで作り上げられたもののようで。

 

軍師の境遇 新装版 (角川文庫)

軍師の境遇 新装版 (角川文庫)

 

 

僕が黒田官兵衛という人についてはじめて知ったのは、高校時代に読んだ松本清張『軍師の境遇』だったんですが、この小説に出てくる官兵衛も従来のイメージ通り、官兵衛だけが小寺家中で信長の力量を性格に見定めている賢い人物という感じに描かれています。

 

「天才軍師」だからこそ凡人とは目のつけどころが違う、みたいな演出ですね。

 

ところが実際には、黒田官兵衛よりも早く、小寺政職に信長に付くよう進言した人物が存在したのです。

それが山脇六郎左衛門という人物です。

 

 山脇六郎左衛門が織田につくよう政職に薦めたのはは天正元年(1573年)のことですが、これによって小寺家での主導権を握ることを狙っていたようです。

しかし、山脇の主張が気に食わない政職は家臣に彼の暗殺を命じました。

何と、この暗殺を実行したのが黒田官兵衛だったのです。

 

風渡る (講談社文庫)

風渡る (講談社文庫)

 

 

 官兵衛は最初は信長派どころか、信長派を粛清する立場だったということです。

この行為について、葉室麟氏は『風渡る』の中でこう書いています。

官兵衛はこのような時、暗殺という手段をためらわない男だった。武門である以上、殺されるのは油断したほうが悪いと思っている。時により非常になるのも、官兵衛にしてみれば、悪人の才ということになる。

この時代の価値観からしたらそうでしょうが、こりゃ大河ドラマではスルーされるしかないでわけすね……

何しろ軍師官兵衛では、終始「戦のない平和な世を作る」ってずっと官兵衛は言っていたし。

その割には信長が死んだ時にはひどい悪相で秀吉に「ご運が開けましたぞ!」とか言ってみたりして、どうもあのドラマの官兵衛は人物像が今ひとつ定まらないところがあったように思います。

 

その官兵衛が信長派に立場を変えるのは天正3年(1575年)になってからです。

この年、信長は長篠で武田勝頼の軍に大勝しています。

ここでようやく信長の強さに気付いたということでしょう。

官兵衛が他の家臣より先見の明があったから信長につくことを主張した、というわけではないようです。

 

何でも先を見通している天才軍師、と言うのは結局ドラマの中の存在でしかないわけですね。

そもそも官兵衛がそんなに先の見える人物なら荒木村重に捕まったりしないだろうし。

 

山脇六郎左衛門の暗殺については、こちらの記事に詳しく書いてあります。

kurokanproject.blog.fc2.com

個人的には、大河ドラマの主人公をそんなにいい人にする必要ってないと思うんですけどね。

真田丸のいいところは昌幸のブラックなところをほぼ史実通りに描いていたところだし、そういうところにこそ時代劇の面白さがあると思うので。