ソースは不明ですが
来年の大河ドラマ「おんな城主直虎」が直虎と井伊直政の二代記になる、というツイートをいくつか見かけたのですが、ソースが何なのかはわかりませんでした。やはりそうか、と言いますか、そうでもしなければこのドラマは一年持たせることができないと思っていたのでそれ自体はいいのですが……
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このことについては、以前このように書きました。
実のところこの本を読んでいて、井伊直虎について書いている部分が一番盛り上がらない感じで、読んでいて少々退屈でした。もちろん井伊家の苦しい時代を城主として生き抜き井伊直政へとバトンを渡した存在として直虎の存在は重要なのですが、では具体的に何をしたのか?というと、今川家の押し付けてくる徳政令に抵抗した、ということくらいしか書かれていません。この内容で本当に一年間持つのか、という懸念は確かに出てきても仕方がないと思います。史料に書かれていない部分を空想でどう埋めていくのか、というのが脚本家の手腕ではありますが。
直虎の人生は、ほぼ遠江の井伊谷城の中だけで展開されます。今川や武田に圧迫される中どう井伊家を舵取りしていくかという難題に立ち向かうという時点で確かに主人公感はあるものの、直虎一代だけではスケール感の小ささは否めない。そこで井伊直政にも登場を願うということでしょう。
しかしこれはタイトル詐欺では
井伊直政が元服するのは22歳の時です。これは元服するのにはかなり遅い年齢です。どういう事情でそうなったかはわかりませんが、この元服の歳は実は直虎が死去する年でもあります。この後、直政は滅びた武田領をめぐって争うことになった北条氏との和睦の使者を勤め、無事に務めを果たして四万石の大名になりますが、直政が本格的に活躍するのはこの後のことです。
直政は武田の遺臣を引き継ぎ、部隊を赤一色で統一します。井伊の赤備えとして有名なこの装備はもともとは武田家臣の山県昌景が採用していたものですが、昌景はかつて井伊谷城を襲ったこともあります。この赤備えの部隊が活躍するのは、直虎の死後ということになるのです。直政の活躍を描こうとすると、「おんな城主直虎」のタイトルと矛盾が出てきてしまうかもしれません。
直政の活躍はどこまで描けるのか
井伊直政を演じる菅田将暉さんは現在23歳です。井伊直政は直虎の死後、小牧・長久手の戦いや小田原城攻め、関ヶ原の戦いなどで数多くの戦功を立てていますが、菅田さんの年齢を考えるとあまり直政の活躍について長く描くつもりはないかもしれませんし、何より主人公である直虎不在の状態でどこまでドラマを続けられるかという点も疑問が残ります。 しかし直虎の生きている時代ではまだ直政は元服前であり、それほど活躍できないということになってしまいます。
史料の少ない時代をどう描くか
先のエントリで紹介したこの本ですが、直虎についての史料が限られているので史実での直虎の活動についてはごくわずかしか触れられず、その生涯の多くの部分は想像に頼って書かれています。
井伊家が治めた彦根藩は三十万石ほどだったが、井伊直弼をはじめ多くの大老を出した。直虎がいなければ、ここまでにはならなかっただろう。直虎の功績は直政を育て、家康と引き合わせたことだ
記事中ではこう書かれていますが、直虎の最大の功績が結局「直政を育てたこと」になってしまうのは、それだけ直虎本人については書けることが少ないからです。これは逆に言えば脚本家の手腕次第で自由に書く余地があるということですが、何しろ真田丸の翌年となるだけによほどうまくやらないと厳しい気もします。色々と不安な要素も残る2017大河ですが、脚本家の森下佳子さんの力量に期待したいところです。