明晰夢工房

読んだ本の備忘録や日頃思ったこと、感じたことなどなど

歴史

小姓の視点から中世ヨーロッパの城の生活を体験できる『中世の城日誌―少年トビアス、小姓になる』

岩波ジュニア新書なんかを読んでいてもよく思うことですが、児童書というものをナメてはいけません。この手の本は多くは専門家が書いていて、子供だましどころか子供向けであるがゆえに内容がわかりやすく、それでいて高度な内容がさりげなく詰め込まれてい…

まるで冒険小説のような興奮を呼び起こす名著。増田義郎『古代アステカ王国』

古代アステカ王国―征服された黄金の国 (中公新書 6) 作者: 増田義郎 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 1963/01 メディア: 新書 この商品を含むブログ (1件) を見る 実はこのエントリのタイトル、最初は「モンテスマは戦闘狂ではなかった!」にするつも…

松浦武四郎の「内向性」と幕府のアイヌ政策批判

www4.nhk.or.jp 先日放送された、英雄たちの選択「北の大地と民を守れ!松浦武四郎・北海道の名付け親」をようやく録画で観ることができた。番組中で一番印象に残ったのは、脳科学者の中野信子が語っていた松浦武四郎の「内向性」だ。 内向性という言葉から…

『王様でたどるイギリス史』

スポンサーリンク // 王様でたどるイギリス史 (岩波ジュニア新書) posted with カエレバ 池上 俊一 岩波書店 2017-02-22 『パスタでたどるイタリア史』は面白い本だったが、それに比べるとこれはかなり個性は控えめな印象。パスタやお菓子など、あまり普通の…

高橋祐一『緋色の玉座』感想:スニーカー文庫で読める東ローマの歴史小説

スポンサーリンク // 緋色の玉座 (角川スニーカー文庫) posted with カエレバ 高橋 祐一 KADOKAWA 2017-05-01 こういう作品がスニーカー文庫から出るというのがまず驚き。 東ゴートやヴァンダル、ササン朝の地図が見られるラノベはなかなかない。 表紙を飾る…

おんな城主直虎10話「走れ竜宮小僧」感想:井伊家の内情を丁寧に描いた内容に好感。今後に期待大

スポンサーリンク // 前回は奥山のキレ方など今ひとつよくわからない点が多かったんですが、今回はかなり良い内容だったと思います。非常に見応えがありました。 直親の政治的判断 結局奥山を斬り死なせてしまった政次。しのは政次の厳しい処分を求めるが、…

英雄たちの選択 坂上田村麻呂についてのメモ

もう3回位放映されているが、興味深い内容だったのでメモ。 田村麻呂の選択は降伏してきたアテルイの命を助けるかどうかという点。なぜ阿弖流為が命乞いなどをしてきたのか?という考察が面白かった。里中美智子説はアテルイは本来死ぬ気だったが、田村麻呂…

史実の「三国志」について学べるおすすめ本を12冊紹介します。

スポンサーリンク // こういうエントリを読むような方は「三国志にはフィクションである三国志演義と陳寿の書いた正史である三国志が存在して……」などという話はとっくにご存知だと思いますのでそのへんは省略します。 書棚を見たら今まで読んだ三国志本が結…

『パスタでたどるイタリア史』感想:パスタとイタリアの歴史を両方楽しめる贅沢な一冊。

スポンサーリンク // パスタでたどるイタリア史 (岩波ジュニア新書) posted with カエレバ 池上 俊一 岩波書店 2011-11-18 Amazon 岩波ジュニア新書には名著が多い 岩波ジュニア新書って名著の宝庫なのでは?と最近思っています。 『砂糖の世界史』なんてそ…

「趙の三大天」李牧の兵法と冒頓単于についてのメモ

スポンサーリンク // キングダム 15 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) posted with カエレバ 原泰久 集英社 2012-06-22 Amazon 史実でも名称だった李牧 キングダムでは趙の「三大天」の一人ということになっている李牧。 この漫画は1巻しか読んだことがな…

命を繋いだものが勝つ、という生き方もある。佐藤賢一『カペー朝』

スポンサーリンク // カペー朝―フランス王朝史1 (講談社現代新書) posted with カエレバ 佐藤賢一 講談社 2009-07-17 Amazon 野心は一代で達成しなくてもいい 軍師官兵衛の中で一番記憶に残っている人物は荒木村重です。 妻子を置いて城から逃げ出しても、「…

アイヌ民族の歴史と文化について知るならまずはこの一冊。瀬川拓郎『アイヌ学入門』

スポンサーリンク // アイヌ学入門 (講談社現代新書) posted with カエレバ 瀬川 拓郎 講談社 2015-02-19 Amazon 著者の瀬川拓郎氏は今まで何冊かアイヌ関連の書籍を上梓していますが、これが一番わかりやすいと思います。 序章ではアイヌの歴史について簡潔…

ウイリアム・ウォレスはキルトを着ていなかった。『スコットランド 歴史を歩く』

スポンサーリンク // スコットランド 歴史を歩く (岩波新書) posted with カエレバ 高橋 哲雄 岩波書店 2004-06-18 Amazon スコットランド史の本はなかなか見かけないのでこの本は貴重。 この1冊があれば、あまり知られることのないスコットランドの近世の歴…

貧困、アルコール中毒、ドラッグ……アメリカの「最底辺」で苦悩するネイティブアメリカンを描く一冊。鎌田遵『ネイティブ・アメリカン』

アメリカ社会の「最底辺」に位置するネイティブ・アメリカン これは衝撃的な一冊だ。 居留地では社会への閉塞感からアルコール依存症に苦しむ人が少なくない。 失業率も高く、ナバホ族の37%は貧困線を下回る生活を送っている。 親族にドラッグを売る売人す…

大河ドラマには出せない黒田官兵衛のブラックな所業を描く小説。葉室麟『風渡る』

スポンサーリンク // 黒田官兵衛と言えば、信長の将来性をいち早く見抜き、主君の小寺政職に毛利ではなく織田に付くように進言した人、というイメージがあるのですが、どうもこうした人間像は小説や大河ドラマで作り上げられたもののようで。 軍師の境遇 新…

室町バーサーカーが江戸時代に消え去った理由とは何か?磯田道史『徳川がつくった先進国日本』

スポンサーリンク // togetter.comこれを読む限り、室町時代ってのはそれはそれは怖い時代だったようで。 下女の商売上のトラブルから町中での喧嘩が始まり、最終的には軍隊同士の衝突まで起きるという地獄絵図のような世界が上記のまとめでは紹介されていま…

劉邦の魅力と"SAVE THE CAT"の法則

スポンサードリンク // 劉邦の魅力の秘密はどこにあるのか? www.saiusaruzzz.com 劉邦という人物は、取り立てて取り柄がある人物とも思えないのに、なぜ多くの人材を惹きつけたのか。 その理由としては、『項羽と劉邦』に書かれているように、「この人は自…

1997年以降の歴代大河ドラマを名言で勝手に振り返る

真田丸もいよいよ佳境を迎えていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。日々ツイッターのTLを眺めていても、このドラマは大変な盛り上がりを見せています。おそらく10年後も語り継がれる作品となっていることでしょう。ですが……この作品をどう評価していい…

おんな城主直虎は「国衆」の物語

真田丸の前半は「国衆」の物語だった 真田丸を通じて有名になった学術用語と言えば、「国衆」だと思います。 真田丸の前半は真田昌幸の物語と言って良い感じだったのですが、昌幸は自分のことを「国衆」と認識していて、「国衆の生き様を見せつけてやる」(…

武田家滅亡の真因「高天神崩れ」とは何か?

スポンサードリンク // 長篠での敗北が決定的だったわけではない 一般的な感覚としては、武田家が信長に滅ぼされたのは長篠の戦いで武田勝頼が敗北したから、というイメージが強いのですが。 確かに長篠の戦いでは、武田家の家臣が数多く戦死しています。 山…

なぜ、世界を救った勇者が一般人として生きなくてはいけないのか?

ドラゴンクエスト7についてずっと疑問に思っていたこと saavedra.hatenablog.com 以前も書きましたが、僕はドラゴンクエスト7は名作だと思っています。 特に3DS版では転職もやりやすくなっているし、シンボルエンカウントなのでいつ敵に遭遇するのかというス…

郭淮って本当に病弱だったの?

三國無双では「晋」の勢力に入っている郭淮。 僕は無双orochiの中でしか見たことがないですが、見るからに病弱で顔色が悪く、いつも咳き込んでいるというキャラクターになっています。 ゲーム中では女好きで人生が楽しそうな郭嘉を羨ましがる一幕もあったり…

古代ローマ末期の「ヘイトスピーチ」

geopoli.exblog.jp 時事問題に過去の歴史を当てはめて解説しようとすると色々と無理が出てきたりするものですが、ローマ領内に侵入したゴート人を「難民」と捉えることは必ずしも的外れとは言えないようです。上記の記事を読んだあと『新・ローマ帝国衰亡史…

「おんな城主直虎」は直虎と直政の二代記になる?

ソースは不明ですが 来年の大河ドラマ「おんな城主直虎」が直虎と井伊直政の二代記になる、というツイートをいくつか見かけたのですが、ソースが何なのかはわかりませんでした。やはりそうか、と言いますか、そうでもしなければこのドラマは一年持たせること…

なぜ真田信繁は「幸村」と呼ばれているのか?

昨日の真田丸では信繁が幸村と名を改めていましたが、その経緯は壺に入れた文字からくじで選ぶというかなり驚くようなものでした。「天下一統」の文字も壺の中に入れてましたが、一とか下とか出てきたらどうするんでしょうか。もっとも、足利義教がくじ引き…

又兵衛は信繁に出丸建設の邪魔をされた?福田千鶴『後藤又兵衛』

真田丸が来週からいよいよ大阪編に突入するようなので、予習として福田千鶴『後藤又兵衛』を読んでみました。 後藤又兵衛 - 大坂の陣で散った戦国武将 (中公新書) 作者: 福田千鶴 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2016/04/19 メディア: 新書 この商品…

誰とも共有できない趣味を見つけたい

特に外向的な人にとって、趣味というのは多くの場合、人間関係の触媒なのではないでしょうか。なにか趣味を探そうとした場合、「それがどれだけ楽しいか」も大事だけれど、「それを通じてどれくらい交友関係が広がるか」を大事にする人達というのがいます。…

91歳まで引退できなかった苦労人の生涯『真田信之 父の知略に勝った決断力』

『真田丸』時代考証担当の一人・平山優さんの『真田信之 父の知略に勝った決断力』が発売されたのでさっそく読んでみました。 真田信之 父の知略に勝った決断力 (PHP新書) 作者: 平山優 出版社/メーカー: PHP研究所 発売日: 2016/09/16 メディア: 新書 この…

2017大河「おんな城主直虎」に感じるいくつかの懸念

スポンサードリンク // 女城主・井伊直虎 (PHP文庫) 作者: 楠戸義昭 出版社/メーカー: PHP研究所 発売日: 2016/04/29 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る まだ気が早い感じではありますが、来年の大河ドラマ『おんな城主直虎』の予習のためにこのよ…

スカイリムの帝国兵はヴァリャーギ?

スカイリムの世界は北欧のような世界がモデルになっていて、ノルドは荒々しい気質の者が多く、戦いを歌いあげる詩人がいるなど、ヴァイキングをモデルにしていると思われるのは周知の通りです。タロス信仰が禁じられるところなど、キリスト教の普及が進んで…