明晰夢工房

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有名人には有名税があり、無名な人には無名控除がある

はてなブックマークの話題が一部で盛んになっている。私もこの話題に一枚嚙もうかと思ったが、よくよく考えると自分にはあまり関係ないことに気づいた。何人かのブロガーはこの件でブックマーカーを批判しているが、それは彼らが有名で、ブックマーカーに叩かれる側だからだ。私のような無名ブロガーのところに、あまりブックマーカーはやってこない。だから普段はブックマークのことなんてまるで意識していない。

 

おまえは便所の落書きのつもりでブコメを書いているのかも知れないが、その便所の落書きには受け取り人がいるんだよネットでは - 自意識高い系男子

私は有名でないからブックマーカーのことはあまり考える必要はないけれども、好きなことや楽しいことをメインに書くことが結果的に自衛策になっている気はする。変なコメントする人は争いの匂いに寄ってくるので。

2023/02/28 21:45

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はてなブックマークに関して、考えていることはこれくらいだ。好きなことを書くのが自衛策だ、とは言ったものの、実は差別やジェンダーなどのデリケートな問題について書いても(あまりやらないが)、私のような無名ブロガーだと炎上しないことが多い。別に書き方がすぐれているからではなく、単に見つかっていないだけだ。無名であることのメリットは、実はけっこうたくさんある。炎上しにくいだけでなく、以前の発言との整合性を問われることもないし、「あなたがそんなことを言う人とは思わなかった」などと失望されることもない。もともと何も期待されていないからだ。有名人に有名税があるとするなら、こうした無名であることのメリットは「無名控除」とでも呼んだらいいだろうか。

 

もちろん、無名だから何をしても許されるわけではない。明らかに間違ったことを言っていたり、差別的な発言をしていたら、知名度とは無関係に批判され得る。私自身、ツイッターザッハトルテについての雑学を投稿したらそれが間違っていたらしく、専門家らしい人から突っ込まれたことがある。こんなときは反省する一方で、「オーストリア政府観光局からハフポストまで皆同じことを言っているのに、なぜ無名な私に突っ込むんだ」という気持ちが出てきたりする。普段はなんの影響力もないから、無名控除を受けることに慣れきっているのだ。有名ブロガーに反論されて狼狽するブックマーカーにも似たようなところはあるかもしれない。「無名だから見逃してくれ」なんて言い分は何も正しくないが、気持ちはわからなくもない。日頃は路傍の石扱いなんだから一貫して無視してくれよ、と思ってしまうことが、人間にはある。

 

無名控除は明らかな誹謗中傷やデマ、差別的発言には適用されないし、されてもいけない。だが逆にいえば、そこさえ避ければ無名控除の恩恵はじゅうぶん受けられる。家族や同僚には言えないお気持ちをネット空間で吐露しても、推しへの愛を叫んだとしても、無名ならほとんど相手にはされないし、恥ずかしい思いもしなくてすむ。どうせ誰も見てないのだから、肩の力を抜いて気楽に書いたらいい。そうして書かれた文章は変に装っていないだけに、かえって特定の誰かに届くことがある。それがいつかはわからないし、いつまでも届かないかもしれない。それはそれでいい。誰にも振り向かれない気楽さは、無名な人だけが味わえる特権だ。

 

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