明晰夢工房

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ネット炎上の激化は社会比較説・沈黙の螺旋・集団的浅慮などが原因

 

 

kndle unlimitedで『眠れなくなるほど面白い図解社会心理学』を読んでいたら、ネット炎上が激化する原因を解説している箇所があった。この本の28ページでは、ネット炎上が加速する原因として「社会比較説」「集団曲化」をあげている。

 

社会比較説とは、他者の多くが自分と同じ意見であることで自分の意見に自信を持ち、その考えがより強化されることです。集団曲化(48ページ)は、集団で討論する際、メンバーにリスキーな意見の人が多ければ、集団での意思決定もよりリスキーに、逆に安全志向の人が多いとより安全に偏る傾向のことです。

 

ネットでは自分と同じ意見をすぐに見つけられるからその考えが強化されやすく、コミュニティは同じ意見を持つ人で固まりやすいから集団曲化もしばしば起きる。攻撃的な意見がコミュニティ内で優位なら、その攻撃性がより強化される。こうして炎上が加速していくと考えられる。

 

このページでは、このふたつの原因のほかに「沈黙の螺旋」「集団的浅慮」も紹介している。沈黙の螺旋とは、自分たちを多数派と認識する側はより雄弁になり、少数派と自認する側が社会的孤立を恐れて沈黙する現象のことだ。人間は社会的動物であり、周囲の状況を敏感に察知して優位な側につこうとする。その結果、多数派はさらに多数派に、少数派はより少数派になる。ネット民が燃やされる側になるのを恐れて燃やす側になることが、炎上を加速させている可能性がある。

 

「集団的浅慮」は、集団であるためにかえって不合理な判断をしてしまう現象のことだ。集団的浅慮はメンバーの結束力が強く、反対意見の出にくい閉鎖的な集団で起こりやすい。「自分たちにとって不都合な情報や反対意見の遮断などが集団的浅慮の兆候」とこの本には書かれているが、炎上が激化するなかで「沈黙の螺旋」がなりたっている状況では、燃やされる側の意見は事実上遮断されてしまう。ここで集団的浅慮が起こり、さらに炎上を加速させてしまうおそれもある。

 

こうした社会心理学の本を読むと、人がいかに社会から排除されるのを恐れているかがよくわかる。ネット炎上も人が社会的孤立を恐れ、多数派をめざす本能から加速してしまうものだが、ネット社会は必ずしも実社会とつながっているわけではない。匿名の人のツイートひとつが炎上したところで、実生活に被害が及ぶことはあまりない。それでも人は炎上を恐れる。原始狩猟社会に生きていたころの本能は、理性ではコントロールできないのか。人の脳がデジタル社会に適応できる日はくるのか。いずれにせよ、いましばらくの間、人々は燃やされる側にならないよう周囲に気を配らなくてはならないようだ。