明晰夢工房

読んだ本の備忘録や日頃思ったこと、感じたことなどなど

漫画

世界史の鼓動が聴こえてくる漫画『天幕のジャードゥーガル』2巻までの感想

天幕のジャードゥーガル 1 (ボニータ・コミックス) 作者:トマトスープ 秋田書店 Amazon 天幕のジャードゥーガル 2 (ボニータ・コミックス) 作者:トマトスープ 秋田書店 Amazon これはある意味、世界史そのものを描いた作品だ。かつてモンゴル史家の岡田英…

ネット上の誹謗中傷がどれだけ高くつくか教えてくれる漫画『しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~』

しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~ 1 (黒蜜コミックス) 作者:左藤真通,富士屋カツヒト,清水陽平 白泉社 Amazon 1巻が無料になっているので読んでみた。ネットで誹謗中傷を受けた場合、被害者に何ができるのか、訴える場合手間やお金はど…

【感想】自己皇帝感あふれるビザンツ皇女アンナ・コムネナが主人公のフルカラー4コマ『アンナ・コムネナ』

アンナ・コムネナ(1) (星海社コミックス) 作者:佐藤二葉 講談社 Amazon 開幕一秒で弟に「お前を消せばいいわけね」と言い放つヒロインもめずらしい。本作の主人公アンナ・コムネナは父アレクシオスが皇帝なので、自分もビザンツ皇帝をめざしていたが、弟…

【感想】たもさん『カルト宗教信じてました。』(kindle unlimited探訪3冊目)

カルト宗教信じてました。 作者:たもさん 彩図社 Amazon 人はなぜカルトにはまるのか?著者にこう問うのは的外れかもしれない。著者がこの宗教に入信したのは母に騙されたからであって、別にこの教えに惹かれたわけではないからだ。英語のレッスンがいつのま…

【感想】「理解のある彼くん」が出てこないから安心?『迷走戦士・永田カビ』(kindle unlimited探訪2冊目)

迷走戦士・永田カビ (webアクションコミックス) 作者:永田カビ 双葉社 Amazon 永田カビ作品にはある種の安心感がある。それまでさんざん人に受け入れられないつらさ、うまく世の中に適応できない苦しさを描いていたのに、どこからか突然その苦しさをすべて受…

逃げ上手の若君1巻感想:新田義貞の影が薄い理由とは?

逃げ上手の若君 1 (ジャンプコミックスDIGITAL) 作者:松井優征 集英社 Amazon そつなくうまい漫画には感想が書きにくい。南北朝時代を舞台に少年漫画をやるのは難しそうだが、冒頭から鎌倉幕府が滅びるという逆境のなかで、三人の郎党と友情を育みつつ成長し…

【感想】ゆうきまさみ『新九郎、奔る!』7巻が描き出す疫病流行と室町時代の「健康格差」

新九郎、奔る! (7) (ビッグコミックススペシャル) 作者:ゆうき まさみ 発売日: 2021/05/12 メディア: コミック 『新九郎、奔る!』のおもしろさは言語化しにくい。7巻の時点でも新九郎はまだ若く、本格的な戦いを経験したこともない。領地経営の苦労話も地味…

マギレコのPAPA先生が描く武田信虎のマンガが面白い

なんと平山優先生監修の武田信虎のマンガがツイッターに投稿されていた。描いているのはマギレコでお馴染みのPAPA先生。信玄のパパだからPAPA先生という人選?かわいい絵柄なのに内容は本格派だ。 こちらのマンガ「信玄のパパ 武田信虎のほんとの話」は、信…

「小説にだけあってマンガや映画やアニメにはない魅力」を示せる人ってなかなかいないよね、という話

小説と同じメリットが漫画にもアニメにもある 小説は君のためにある (ちくまプリマー新書) 作者:藤谷 治 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2018/09/06 メディア: 新書 藤谷治さんの『小説は君のためにある』を読みました。 若い読者に向けて、小説の魅力を…

【感想】『図書館の大魔術師』3巻における「知性の多様性」

図書館の大魔術師(3) (アフタヌーンKC) 作者: 泉光 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2019/08/07 メディア: コミック この商品を含むブログを見る いよいよ司書試験が始まった。第一次の筆記試験は2巻の終盤からすでに始まっているが、この試験は3日間個室に…

【感想】『図書館の大魔術師』2巻に見る「知識の使い方」

図書館の大魔術師(2) (アフタヌーンコミックス) 作者: 泉光 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2018/11/07 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る saavedra.hatenablog.com 本が与えてくれるものとは何か 1巻かけてようやく真の主人公となったシ…

『図書館の大魔術師』1巻が良すぎて語彙力を失ったのでIQを取り戻しつつ感想を書くことにする

図書館の大魔術師(1) (アフタヌーンコミックス) 作者: 泉光 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2018/04/06 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (2件) を見る 「すげえものを見た。すげえものを見た」 これは、北方水滸伝で花英が敵将を一矢で仕とめ…

『王様ランキング』を傑作たらしめているのは「才能を見つけてもらえない不安」

mangahack.com 王様ランキング 1 (ビームコミックス) 作者: 十日草輔 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2019/02/12 メディア: コミック この商品を含むブログを見る 王様ランキング 2 (ビームコミックス) 作者: 十日草輔 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日…

ゆうきまさみ『新九郎、奔る!』が掘り進む「室町時代という鉱脈」

新九郎、奔る! (1) (ビッグコミックススペシャル) 作者: ゆうきまさみ 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2018/08/09 メディア: コミック この商品を含むブログ (4件) を見る ゆうきまさみ氏の『新九郎、奔る!』1巻を読みました。 この作品の冒頭は、38歳に…

石ノ森章太郎『マンガ日本の歴史』で中世史を学ぶ

岩波新書の『後醍醐天皇』を読もうとしたがあまり内容が頭に入ってこない。南北朝時代の基本的な史実が頭に入っていないせいだ。こういうときはビジュアルがあるものがいいだろうというわけで、石ノ森章太郎『マンガ日本の歴史』を手にとってみた。このシリ…

永田カビ『一人交換日記』最終回に思ったこと

comic.pixiv.net pixivコミックで連載されていた永田カビさんの『一人交換日記』が11月に最終回を迎えていた。 この最終回は一応ハッピーエンド……なのかな。 読む人によっていろいろと思うところがあるだろうけど、家族との関係が良くなったのならそれはやは…