明晰夢工房

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岩波新書『シリーズアメリカ合衆国氏』『シリーズ中国の歴史』が電子書籍化

 

 

岩波新書の『シリーズ合衆国史』と『シリーズ中国の歴史』が電子書籍化されます。合衆国史と中国の歴史の1、2巻がそれぞれ12月24日から配信開始です。アメリカ史はオーソドックスな通史ですが、シリーズ中国の歴史は王朝ごとに分けるのではなく、江南や草原など地域にも着目して長いスパンで中国史を見ていくことで、新視点からの中国史概説書をめざしています。このシリーズはどの巻も読みごたえがある内容です。

 

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『植民地から建国へ』はアメリカ独立以前の記述も比較的多く、先住民族の生活については数万人を擁する大規模な都市が存在したなど、あまり知られていない史実の記述もあります。13植民地のタバコの国際競争力の強さや、イギリスからの年季奉公人の流入など、植民地が発展していった経済的・社会的理由もよくわかります。

 

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『中華の成立 唐代まで』は制度史についての記述が多く、かなり硬い内容にはなりますが、貢献制・封建制・郡県制という中国王朝の骨格をなす部分の解説がくわしいので、中国王朝の「しくみ」について知りたい方にはおすすめの内容です。春秋時代の人骨のDNA解析から孔子の目が青かった可能性もあるなど、興味深い内容も含んでいます。

 

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国史シリーズ2巻の『江南の発展』は中国の「船の世界」を描く概説ですが、この巻では1巻とは違った意味で中国史の「しくみ」について知ることができます。具体的には官僚になれば政治力・経済力・文化力すべての社会的威信を総取りしているという点で、商人が一族から科挙官僚を生み出し国家機構に食い込む理由もこれです。政治は武士、経済は豪農・豪商、文化は公家・僧侶というふうに力が分散している日本社会と比較するのもおもしろいと思います。

 

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こちらで紹介した『性からよむ江戸時代』も24日から配信されますが、こちらは小林一茶の夜の生活を記録した文書から江戸時代の民衆の性のあり方を読みとくなど、興味深い内容になっています。江戸時代の農村の離婚訴訟や不義の子の扱いなど、庶民の生活について知りたい方には特におすすめです。

 

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シリーズ中国の歴史は3~5巻目もすべて良い内容だったので、早い時期の電子書籍化を期待しています。