明晰夢工房

読んだ本の備忘録や日頃思ったこと、感じたことなどなど

2019-01-01から1年間の記事一覧

『氷と炎の歌』(ゲームオブスローンズ原作)を読んで考えた「小説の強み」

『氷と炎の歌』を先に読んでいると感じる違和感 最近、アマゾンプライムでゲームオブスローンズを観ている。 いまさら言うまでもなく、これは極めてすぐれた映像作品だし、これに多くの人が熱中しているのもよくわかる。 だが、原作小説『氷と炎の歌』シリー…

【感想】『図書館の大魔術師』2巻に見る「知識の使い方」

図書館の大魔術師(2) (アフタヌーンコミックス) 作者: 泉光 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2018/11/07 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る saavedra.hatenablog.com 本が与えてくれるものとは何か 1巻かけてようやく真の主人公となったシ…

『図書館の大魔術師』1巻が良すぎて語彙力を失ったのでIQを取り戻しつつ感想を書くことにする

図書館の大魔術師(1) (アフタヌーンコミックス) 作者: 泉光 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2018/04/06 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (2件) を見る 「すげえものを見た。すげえものを見た」 これは、北方水滸伝で花英が敵将を一矢で仕とめ…

旧約聖書の面白さはもっと知られるべき。阿刀田高『旧約聖書を知っていますか』で旧約聖書の一番おいしいところがわかる

旧約聖書を知っていますか (新潮文庫) 作者: 阿刀田高 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1994/12/20 メディア: 文庫 購入: 12人 クリック: 85回 この商品を含むブログ (85件) を見る 大学生一年生のとき、旧約聖書学という授業を取ったことがある。先生はい…

『昭和史の10大事件』と宮部みゆきの見た宮崎勤事件

昭和史の10大事件 作者: 半藤一利,宮部みゆき 出版社/メーカー: 東京書籍 発売日: 2015/08/24 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 半藤一利と宮部みゆきが、昭和金融恐慌や2・26事件、東京裁判や金閣寺消失など、昭和史の「10大事件」につ…

マクベスとマクベス夫人と「男らしさ」の枷

かつてある大物政治家を暗殺しそこねた右翼青年が「男になりたかった」と漏らしていた記憶がある。男はただ生きているだけでは「男」になれない、「男らしい」何かをなさなくてはならないのだ──こういう価値観は古びてきてはいるものの、それでもなお残ると…

ヴァイキングの歴史や文化を知るためのおすすめ本5冊

ヴィンランド・サガのアニメも始まるので、ヴァイキング関連で今まで読んだものの中からおすすめ本を紹介することにします。ヴァイキング本の中でもなるべく内容がかぶらないものを選んでみました。 1.図説ヴァイキングの歴史 図説 ヴァイキングの歴史 作…

【書評】『世界の辺境とハードボイルド室町時代』文庫版の「近未来日本に中学氏族が出現する」という話が面白い

世界の辺境とハードボイルド室町時代 (集英社文庫) 作者: 高野秀行,清水克行 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2019/05/17 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る この本の面白さはもうあちこちで語られ尽くしている気もするし、実際一度手に取ったが最…

【感想】『鹿の王』の最大の魅力は「あたりまえを活写する力」

鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐ 作者: 上橋菜穂子 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店 発売日: 2014/09/24 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (51件) を見る 鹿の王 (下) ‐‐還って行く者‐‐ 作者: 上橋菜穂子 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店 発売日…

【感想】柳広司『二度読んだ本を三度読む』と「司馬史観」という枷

二度読んだ本を三度読む (岩波新書) 作者: 柳広司 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2019/04/20 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る アニメ化もされた『ジョーカー・ゲーム』などが有名な柳広司さんの書評集。取り上げられている作品は『山月記』…

【感想】『ゼロから始める魔法の書 ゼロの傭兵(上)(下)』

ゼロから始める魔法の書IX ―ゼロの傭兵〈上〉― (電撃文庫) 作者: 虎走かける 出版社/メーカー: KADOKAWA / アスキー・メディアワークス 発売日: 2017/06/09 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る ゼロから始める魔法の書X ―ゼロの傭兵〈下〉― (電…

【感想】虎走かける『魔法使い黎明期 劣等生と杖の魔女』

魔法使い黎明期 劣等生と杖の魔女 (講談社ラノベ文庫) 作者: 虎走かける,しずまよしのり,いわさきたかし 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2018/08/31 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 『ゼロから始める魔法の書』と世界観を同…

【感想】宮西真冬『友達未遂』の圧倒的な「負の人間描写」の上手さに震えた

友達未遂 作者: 宮西真冬 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2019/04/24 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 一読し、「人間が書けているとはこういうことだ」と強く思った。 全寮制の星華高等学校を舞台に四人の少女たちが織り成…

【書評】岩波シリーズアメリカ合衆国史1『植民地から建国へ』

植民地から建国へ 19世紀初頭まで (岩波新書) 作者: 和田光弘 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2019/04/20 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 岩波新書から「シリーズアメリカ合衆国史」シリーズの刊行が始まりましたが、これはその1冊目になり…

【感想】『世にも危険な医療の世界史』の衝撃的すぎる内容を紹介する

世にも危険な医療の世界史 作者: リディアケイン,ネイトピーダーセン,福井久美子 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2019/04/18 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 健康法の歴史は古い。今でも健康オタクはたくさんいるが、科学の未発達な時代の…

【感想】蓑輪諒『最低の軍師』上杉謙信を相手取る軍師・白井浄三の采配に刮目せよ!

最低の軍師 (祥伝社文庫) 作者: 簑輪諒 出版社/メーカー: 祥伝社 発売日: 2017/09/13 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る これはお見事。臼井城の戦いというマイナーな戦いを主題に持ってきた時点でまず目のつけどころがいい。歴史小説はどうしても…

『世界歴史大系 ロシア史1』と「タタールのくびき」

ロシア史〈1〉9~17世紀 (世界歴史大系) 作者: 田中陽児,倉持俊一,和田春樹 出版社/メーカー: 山川出版社 発売日: 1995/09/01 メディア: 単行本 クリック: 2回 この商品を含むブログ (1件) を見る ロシア史の本は案外日本には少なくて、とくにキエフ公国時代…

英雄たちの選択がついに世界史に進出!「ナバテアvsローマ帝国」

NHKBS「英雄たちの選択」が世界史ネタを取り上げるのは番組6年目にして初めてだそうですが、磯田さんは番組当初から世界史も取り上げたかったようですね。 ナバテア王国のことは名前くらいしか知らなかったのですが、番組で取り上げられていたナバテアの都市…

ドラクエ11で子供のころの記憶が書き換わった

【3DS】ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス 発売日: 2017/07/29 メディア: Video Game この商品を含むブログ (60件) を見る 70時間弱かけてドラゴンクエスト11の真エンドに到達しました。 作品単体で見ても完…

【書評】斎藤孝『ネット断ち 毎日の「つながらない一時間」が知性を育む』

ネット断ち (青春新書インテリジェンス) 作者: 齋藤孝 出版社/メーカー: 青春出版社 発売日: 2019/01/08 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る およそ現代ほど、人間が「他人からどう見られているか」を気にしている時代はありません。ツイッターでは…

【感想】6人の戦国武将の「最期の24時間」を描く木下昌輝『戦国24時 さいごの刻』

戦国24時 さいごの刻(とき) 作者: 木下昌輝 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2016/09/15 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 6人の戦国武将の最後の24時間をそれぞれの立場で語る、というちょっと変わった趣向の短編集。 取り上げられる人物は豊…

【感想】映画『武士の家計簿』

武士の家計簿 発売日: 2013/11/26 メディア: Prime Video この商品を含むブログを見る 武士の家計簿(初回限定生産2枚組) [DVD] 出版社/メーカー: 松竹 発売日: 2011/06/08 メディア: DVD 購入: 4人 クリック: 22回 この商品を含むブログ (79件) を見る 地…

【感想】師走トオル『ファイフステルサーガ2 再臨の魔王と公国の動乱』

ファイフステル・サーガ2 再臨の魔王と公国の動乱 (ファンタジア文庫) 作者: 師走トオル,有坂あこ 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2018/09/20 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (1件) を見る 1巻は冒頭で魔物との戦いもありましたが、今回は全編人間…

【書評】牧原憲夫『岩波シリーズ日本近現代史2 民権と憲法』

民権と憲法―シリーズ日本近現代史〈2〉 (岩波新書) 作者: 牧原憲夫 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2006/12/20 メディア: 新書 購入: 3人 クリック: 44回 この商品を含むブログ (44件) を見る 明治という時代が国家全体としては間違いなく上昇気流に乗る…

ケン・リュウ『母の記憶に』文庫版と『草を結びて環を銜えん 』が別々に発売

母の記憶に (ハヤカワ文庫SF) 作者: ケン・リュウ,古沢嘉通,幹遙子,市田泉 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2019/05/23 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る ケン・リュウ『母の記憶に』の文庫版がやたら安いと思っていたら、やはり収録されている…

【書評】藤田覚『岩波シリーズ日本近世史5 幕末から維新へ』

幕末から維新へ〈シリーズ 日本近世史 5〉 (岩波新書) 作者: 藤田覚 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2015/05/21 メディア: 新書 この商品を含むブログ (5件) を見る これは岩波新書日本近世史シリーズの中でも出色の出来。タイトルに幕末と入っているも…

audibleの無料体験期間に『日の名残り』を全部聴いたので感想を書く

audibleを聴けばアマゾンプライム会員なら一月あたりamazonポイントが最大1000ポイント溜まりますよ、という宣伝文句につられてこのサービスを1か月無料体験してみることにしました。 今までオーディオブックというものを聴いたことがなかったのですが、結論…

【感想】吉岡大祐『ヒマラヤに学校をつくる カネなしコネなしの僕と、見捨てられた子どもたちの挑戦』

ヒマラヤに学校をつくる 〜カネなしコネなしの僕と、見捨てられた子どもたちの挑戦 作者: 吉岡大祐 出版社/メーカー: 旬報社 発売日: 2018/08/27 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 滞在費が安いから、という理由で行き先をアメリカからネパール…

【感想】『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』

アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」 (集英社新書) 作者: 中川裕,野田サトル 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2019/03/15 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 『ゴールデンカムイ』のアイヌ語監修をつとめる中川裕氏がこの漫画を題材に、アイ…

【書評】『読書する人だけがたどり着ける場所』はどこなのか?

読書する人だけがたどり着ける場所 (SB新書) 作者: 齋藤孝 出版社/メーカー: SBクリエイティブ 発売日: 2019/01/08 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る この本のタイトルをグーグルで検索してみたら、「読書する人だけがたどり着ける場所 要約」と出…