明晰夢工房

読んだ本の備忘録や日頃思ったこと、感じたことなどなど

【感想】たもさん『カルト宗教信じてました。』(kindle unlimited探訪3冊目)

カルト宗教信じてました。 作者:たもさん 彩図社 Amazon 人はなぜカルトにはまるのか?著者にこう問うのは的外れかもしれない。著者がこの宗教に入信したのは母に騙されたからであって、別にこの教えに惹かれたわけではないからだ。英語のレッスンがいつのま…

【書評】中国の南北朝時代が新書一冊でわかる!会田大輔『南北朝時代 五胡十六国から隋の統一まで』

南北朝時代―五胡十六国から隋の統一まで (中公新書) 作者:会田大輔 中央公論新社 Amazon これは大変コスパの高い一冊。新書一冊で西晋の崩壊から隋の統一にいたる長い分裂時代を概観できるうえ、各所に新知見が盛り込まれている。政治史中心で、主要人物のエ…

【感想】「理解のある彼くん」が出てこないから安心?『迷走戦士・永田カビ』(kindle unlimited探訪2冊目)

迷走戦士・永田カビ (webアクションコミックス) 作者:永田カビ 双葉社 Amazon 永田カビ作品にはある種の安心感がある。それまでさんざん人に受け入れられないつらさ、うまく世の中に適応できない苦しさを描いていたのに、どこからか突然その苦しさをすべて受…

瓜生中『よくわかる浄土真宗』(kindle unlimited探訪1冊目)

よくわかる浄土真宗 重要経典付き (角川ソフィア文庫) 作者:瓜生 中 KADOKAWA/角川学芸出版 Amazon kindle unlimitedが2ヶ月で299円のキャンペーン中だったので昨日から入ってみた。仏教の入門書はかなりたくさん読めるので、まず読み放題の期限が切れそうな…

【書評】阿部拓児『アケメネス朝ペルシア 史上初の世界帝国』

アケメネス朝ペルシア- 史上初の世界帝国 (中公新書, 2661) 作者:阿部 拓児 中央公論新社 Amazon 読みやすくわかりやすいアケメネス朝史の概説。キュロスの建国からアレクサンドロスの東征による滅亡まで、アケメネス朝ペルシアの220年の興亡を王の列伝形式…

【感想】火坂雅志『軒猿の月』

軒猿の月 (PHP文芸文庫) 作者:火坂 雅志 PHP研究所 Amazon 最近kindle unlimitedを使っているので、ここで読んだものの感想をいくつか。 『軒猿の月』は火坂雅志作品としては異色の作品集になる。大河ドラマ化された『天地人』をはじめとして骨太な歴史小説…

戦国時代に大進歩を遂げた京都のトイレ事情

京都〈千年の都〉の歴史 (岩波新書) 作者:高橋 昌明 岩波書店 Amazon 前近代の都市は大体どこもそうだが、古代の京都もかなり不衛生な都市だった。『京都<千年の都>の歴史』では、平安京の路上の様子について以下のように紹介している。 10世紀後半成立の『…

逃げ上手の若君1巻感想:新田義貞の影が薄い理由とは?

逃げ上手の若君 1 (ジャンプコミックスDIGITAL) 作者:松井優征 集英社 Amazon そつなくうまい漫画には感想が書きにくい。南北朝時代を舞台に少年漫画をやるのは難しそうだが、冒頭から鎌倉幕府が滅びるという逆境のなかで、三人の郎党と友情を育みつつ成長し…

かつて日本人が「猫食い」をしていた時代があった──真辺将之『猫が歩いた近現代──化け猫が家族になるまで』

猫が歩いた近現代―化け猫が家族になるまで 作者:真辺 将之 吉川弘文館 Amazon 現代ほど猫が愛されている時代もない。テレビをつければ岩合光昭が野良猫にカメラを向ける姿が映り、ツイッターを開けば「我が家の黒い妖怪」といった一文とともに日夜猫画像が流…

【書評】総勢31人の武人の生涯から南北朝時代を俯瞰できる『南北朝武将列伝 南朝編』

南北朝武将列伝 南朝編 戎光祥出版 Amazon 楠木正成や新田義貞・北畠顕家など有名どころから、南部師行・諏訪直頼などちょっとマイナーな人物まで南朝を支えた人物を網羅した本。「武将列伝」なので後醍醐天皇や後村上天皇の列伝はないが、執筆陣は全員が日…

【感想】道尾秀介『雷神』

雷神 作者:道尾秀介 新潮社 Amazon 「ラスト1ページの衝撃」を売りにするミステリはけっこう見かけるが、この一文はこの作品にこそふさわしい。道尾秀介が「これから先、僕が書く作品たちにとって強大なライバルになりました」と自負する『雷神』は、ラスト…

末摘花はソグド人の血を引いていた?八條忠基『「勘違い」だらけの日本文化史』

「勘違い」だらけの日本文化史 作者:八條忠基 淡交社 Amazon 源氏物語のヒロインのなかでも末摘花が不器量だったことはよく知られている。末摘花のモデルは醍醐天皇の四子・重明親王の子源邦正だと考えられているが、この人物の容姿は末摘花に酷似している。…

【感想】修道女フィデルマシリーズ長編第一作『死をもちて赦されん』

死をもちて赦されん (創元推理文庫) 作者:ピーター・トレメイン 東京創元社 Amazon 若くて美貌、学識豊かで弁護士資格を持ち頭脳明晰……と超ハイスペックな修道女フィデルマが難事件を解決するフィデルマシリーズの第一作。本作『死をもちて赦されん』ではイ…

戦国日本における「水軍」と「海賊」はどう違うのか?小川雄『水軍と海賊の戦国史』

水軍と海賊の戦国史 (中世から近世へ) 作者:雄, 小川 発売日: 2020/04/27 メディア: 単行本(ソフトカバー) 戦国時代の「海賊」としては瀬戸内海の来島村上氏や能島村上氏がよく知られている。ところで「海賊」とはなんだろうか。本書『水軍と海賊の戦国史…

落ちこんだときはどんな本を読めばいい?寺田真理子『心と体がラクになる読書セラピー』

心と体がラクになる読書セラピー 作者:寺田 真理子 発売日: 2021/04/23 メディア: 単行本(ソフトカバー) 古代ギリシャのテーバイの図書館のドアには「魂の癒しの場所」と書かれていたという。読書にセラピー効果があることは、古代人もよく理解していた。…

ゲームさんぽの藤村シシンさんの動画は古代ギリシャ文化入門として圧倒的におすすめ

www.youtube.com ゲームさんぽの動画は面白いものが多いですが、藤村シシンさんはゲームさんぽに出演することを目的にしていただけあって、藤村さんが出ている回は解説の巧みさと気合の入り方が見事です。 一番新しい上の動画ではアサシンクリードオデッセイ…

【感想】ゆうきまさみ『新九郎、奔る!』7巻が描き出す疫病流行と室町時代の「健康格差」

新九郎、奔る! (7) (ビッグコミックススペシャル) 作者:ゆうき まさみ 発売日: 2021/05/12 メディア: コミック 『新九郎、奔る!』のおもしろさは言語化しにくい。7巻の時点でも新九郎はまだ若く、本格的な戦いを経験したこともない。領地経営の苦労話も地味…

「日出処の天子」は倭と隋が対等という意味ではない?河上麻由子『古代日中関係史 倭の五王から遣唐使以降まで』

古代日中関係史-倭の五王から遣唐使以降まで (中公新書 2533) 作者:河上 麻由子 発売日: 2019/03/16 メディア: 新書 「日出づる処の天子より、日没する処の天子に書を致す」──これは、聖徳太子が隋の煬帝に送ったとされる書状の文言としてあまりに有名だ。だ…

【感想】「うつヌケも運のうち」なのか?田中圭一『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』

うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち 【電子書籍限定 フルカラーバージョン】 (角川書店単行本) 作者:田中 圭一 発売日: 2017/01/19 メディア: Kindle版 サンデルの新刊『実力も運のうち 能力主義は正義か?』が話題だ。一見実力で勝ちとったようにみえる社…

【感想】火坂雅志・伊東潤『北条五代(上)(下)』

北条五代 上 作者:火坂 雅志,伊東 潤 発売日: 2020/12/07 メディア: Kindle版 火坂雅志が執筆中に急逝したため未完になっていた作品を伊東潤が引き継ぎ完成させた『北条五代』を読んだ。後北条氏五代の興亡を描くこの作品で、火坂雅志は三代目当主・北条氏康…

【感想】謎解き×怪異×人情全部入りの宮部みゆきよくばりセット『きたきた捕物帳』

きたきた捕物帖 作者:宮部みゆき 発売日: 2020/05/29 メディア: 単行本 宮部みゆきの時代ものには怪異要素のあるものとないものがある。怪異入りなのは『三島屋変調百物語』『荒神』『あかんべえ』などで、これらの作品は捕物ではない。いっぽう怪異なしの作…

【書評】殷の女性兵士から兵馬俑の髪型の秘密まで、古代中国史の最新知見を得られる『戦争の中国古代史』

戦争の中国古代史 (講談社現代新書) 作者:佐藤信弥 発売日: 2021/03/17 メディア: Kindle版 古代中国史の入門書として文句なしにおすすめできる本が出た。本書『戦争の中国古代史』はタイトル通り軍事についての記述が多いものの、殷~前漢の政治史を要領よ…

マギレコのPAPA先生が描く武田信虎のマンガが面白い

なんと平山優先生監修の武田信虎のマンガがツイッターに投稿されていた。描いているのはマギレコでお馴染みのPAPA先生。信玄のパパだからPAPA先生という人選?かわいい絵柄なのに内容は本格派だ。 こちらのマンガ「信玄のパパ 武田信虎のほんとの話」は、信…

【感想】菊池英明『太平天国 皇帝なき中国の挫折』

太平天国――皇帝なき中国の挫折 (岩波新書 新赤版 1862) 作者:菊池 秀明 発売日: 2020/12/19 メディア: 新書 なぜ太平天国軍は清朝にかわり、中国の支配者になれなかったのか。そう問いを立てつつこの本を読みはじめた。読み進めると、太平天国側の体制にはあ…

【感想】筒井忠清編『昭和史講義 戦後編(上)』はシベリア抑留の入門書として使える

昭和史講義【戦後篇】(上) (ちくま新書) 発売日: 2020/08/07 メディア: 新書 全20講の構成で昭和史の様々なトピックを取りあげているが、この本の内容ではとくにシベリア抑留について興味を引かれた。第3講「シベリア抑留」は22ページ程度の内容だが、この講…

【感想】田中優子・松岡正剛『江戸問答』

江戸問答 (岩波新書 新赤版 1863) 作者:田中 優子,松岡 正剛 発売日: 2021/01/22 メディア: 新書 2章の浮世問答の「学問のオタク化と多様化」がおもしろい。明治維新は江戸時代の「学び」から出ているが、江戸時代の学びとは「実」と「遊」の間にあるものだ…

【感想】今村翔吾『くらまし屋稼業』

くらまし屋稼業 (時代小説文庫) 作者:今村翔吾 発売日: 2020/05/15 メディア: Kindle版 松永久秀を主人公とする『じんかん』で話題になった今村翔吾の人気シリーズの第一作。希望する者を江戸の外に逃がす「くらまし屋」を裏家業とする堤平九郎が主人公。『…

【書評】古代蝦夷の入門書として最適の本:工藤雅樹『蝦夷の古代史』

蝦夷の古代史 (読みなおす日本史) 作者:雅樹, 工藤 発売日: 2019/05/17 メディア: 単行本 古代日本を語るうえで、蝦夷の存在は欠かせない。奈良時代から平安時代初期にかけて、律令国家はかなりの力を傾けて「征夷」をおこなった。蝦夷はそれだけ日本にとっ…

【書評】蝦夷が武士の成立に与えた影響とは?桃崎有一朗『武士の起源を解きあかす』

武士の起源を解きあかす ──混血する古代、創発される中世 (ちくま新書) 作者:桃崎有一郎 発売日: 2018/11/23 メディア: Kindle版 この本の著者、桃崎有一朗氏によれば、武士がどこからどう生まれたのか、という問いに日本の歴史学界は答えられていないのだと…

ソクラテスの妻クサンティッペの「悪妻伝説」はどのように生まれたか

ソクラテス (岩波新書) 作者:田中 美知太郎 発売日: 2019/11/28 メディア: Kindle版 ソクラテスの妻クサンティッペは「悪妻」だったといわれる。彼女はときにソクラテスに水を浴びせかけたり、上着をはぎ取ったりしたという。そんな扱いを受けてもソクラテス…